2015年8月31日

⑩大学出張授業(東京女子大学人間科学科)

Filed under: 授業・学習・進学 — 漆 @ 4:00 PM

担当の住谷からの報告です。

外国語学では、東京女子大学人間科学科言語科学専攻の松尾慎教授にお越しいただき、「ハサミと糊で体感する日本語表記」というテーマで授業をしていただきました。
事前の持ち物がハサミと糊と色ペン、そして教室は4人グループで机を分けられている状態、英会話をやるような気持ちでやってきた生徒たちは「??」と不思議そうでした。
まずは先生の自己紹介。日本語を教えるということをライフワークとしているとのことですが、なかなかに波瀾万丈な人生を歩んでこられたようです。
授業では多くの問が投げられました。「日本語を著すものといったら??」生徒は次々と「ひらがな」「カタカナ」「漢字」などと答えます。「点字」という答えには思わず先生も感心。他にもローマ字や指点字(視覚聴覚両方ない方のためのもの)というものもあると伺い、みんななるほどと頷いていました。
次、「では、カタカナはどんなときに使うだろうか?」という問。「外来語を表記するとき」「漢字のフリガナ」「レストランで順番待ちの名前を書くとき」など、これまた様々な意見が出ました。

いよいよグループ作業へ。たくさんのチラシが配られ「この中からカタカナを抜き出して紙に貼っていきましょう!」みんな必死でハサミで切り取り、ペタペタ貼っていきます。意外にあるものです。

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そして「どんな使われ方があるだろうか?」という問が投げかけられました。途中グループをシャッフルしながら切り取ったカタカナを色分けしながら意見をまとめ、発表し合いました。「ギャルっぽく使うとき」「漢字だと難しいもの」「軽めに表現したいとき」「効果音」などいろいろ出てくる中で、1枚のプリントが配布されました。以前人気を博した朝の連続ドラマでスコットランド人妻を演じたアメリカ人女優がインタビューに答えたという記事。そこには彼女が印象的な日本語として答えた「ダイジョーブ」という一言が。先生は「なぜカタカナで書くのだろうか?」と質問しました。いわれてみると、外国人が日本語を話す様子を表現するとき、カタカナ表記が圧倒的に多いことに気づきます。「どのレベルまで話せるようになったらカタカナ表記じゃなくなるのだろう?」「もし、あなた方の話す英語が、(実際にはないけれど)カタカナのような表記で書かれていたらどう思うだろうか?」ここでみんなはカタカナ表記という中に潜む差別意識に気づきました。使っている人には差別意識も悪気もないかもしれない、だけど、これを見た外国人は自分の言葉が受け入れられていないという思いを抱くのです。同じようなことで「外人」という言葉があります。これも言われた側からすると同等に扱ってもらえないという思いを抱くのです。言葉の重みを感じ、生徒たちも真剣な表情をしていました。
最後に、非日本語ユーザーに日本語を教える方法を、ブラジル語を例えに実演していただきました。ポイントは英語を絶対使わない、その言語だけを使って教えること。様々な言語を使う人がいる中で、英語がわかる人だけが有利になってしまい、不公平が生じるからです。ブラジル語を学ぶならブラジル語だけで教える。一番公平です。非常に納得、そして実演を見て、確かに習得しやすい方法だと感じました。
生徒たちにとって、外国語学の名前からはおそらく予想もしなかった内容だったと思いますが、言語の奥深さを体感した貴重な時間となり、それぞれ充実感を得て終わることができました。松尾先生、本当にありがとうございました。

*先日ブログで紹介した「INNOVATORS’ SUMMER 2015」のダイジェスト(動画)が公開されました。このイベントは、本校を会場に行われた高校生のための起業家講座に中学生で参加していた山内奏人さんよりご紹介いただきました。

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