特別講座(池上彰先生と学ぶ①)
今日も夏のような1日です。
先月から池上彰さんに特別講座をしていただいています。社会問題に関心のある生徒達から、何度も「先生、池上さんはご存じないですか?」と言われていたのですが、さすがにお願いするのをためらっていました。
あるとき、お茶の水大学での講義をまとめた池上さんの著書『世界を変えた10人の女性』を拝読する機会があり、「こうした授業を進路選択の前に受けられれば、未来は大きく広がる、きっと将来それを社会にシェアしてくれるはず!」と、以前、鼎談をさせていただいたご縁をたよりに思い切ってお願いしてみました。
そして、お忙しい中、なんと、5回シリーズでお越しいただけることになりました。
1回目の授業の様子を、担当の窪田からの報告します。
いつもは「考える前にまず行動」の品女生も、さすがに池上さんの前ではかなり緊張していて、なかなか手が上がらず、ちょっとヒヤヒヤしました。
1回目の感想を読むと、次回こそは積極的にと子供達も思ったようです。池上さんにもお送りし、読んでいただきました。
応募者多数の中、担当教員が目をつぶってくじを引き、参加できることになった幸運を活かし、社会を変える一歩を踏み出してほしいです。
4月27日、特別講座「池上彰先生と学ぶ」第1回授業を行いました。
4年生と5年生に40名で募集したところ、3倍以上の申し込みがありました。この講座は5回シリーズで、『世界を変えた10人の女性』(池上彰著)を教材に授業を行います。この本は、歴史上名を残した10名の女性について、お茶の水女子大学で行われた講義を収録したものです。
今回の特別講座は、この本の中から毎回別の人物やテーマを設定して、授業を展開します。第1回は、「ベアテ・シロタ・ゴードン」。GHQの民政局に勤め、日本国憲法の草案を作成したアメリカ出身の女性です。彼女は、幼少期を日本で過ごし、人々の生活を肌で感じた経験にもとづいて、特に女性の権利を中心に憲法の内容を考えた人物です。
彼女が考えた、いわゆる「幻のベアテ憲法(実現しなかった案)」と日本国憲法、そして現在の日本における女性の現状を照らし合わせ、憲法の内容をどのようにすべきかをグループで論じるというのが、今回の授業の内容です。
抽選で選ばれた40名の参加者が緊張しながら待つ中、池上彰さんを会場の教室にご案内しました。 最初に、日本国憲法とベアテさんの憲法を比較して、気づいたこと、考えたことを発表してもらった上で、池上さんにベアテさんの憲法についての視点を解説していただきました。
次にグループ討論をしました。
グループ討論の一つめは、「日本の現状や問題点」についてです。グループで話し合ったことを紙に書き、黒板に掲示した上で、全員の前で説明してもらいます。
一番乗りのグループが貼った後、なかなか意見がまとまらないところも意欲的にまとめ始めていました。「女性の管理職が少ない」「女性の首相がいない」「女性が働きづらい」「女性を優先すること自体が差別につながる」などの意見が出されました。 ただし、女子校(しかも本校のような雰囲気)に通っている生徒たちは、自分自身ではそのような立場にあることを直接感じたことはまだないようでした。
これらの意見に、池上さんがコメントをしてくださいます。
率直な生徒の意見に注目してコメントをしてくださったことで、場が盛り上がりました。それらを踏まえた上で、グループ討論の2つめです。テーマは、「女性の視点で日本国憲法を書き直すとしたら」です。
ベアテさんが願っていたのに盛り込まれなかったこと、それが現在の日本社会の現状につながっているとしたら、憲法はどのようにあるべきなのか。
憲法第24条の、「婚姻は、両性の合意のみにもとづいて成立し…」という条文に注目したグループ、また「憲法は変えるべきでない、社会の意識を変える」という結論に達したグループ等、色々な視点からの結論が出ました。これらにも、池上さんからコメントをいただきました。
その中で注目された点がいくつかあります。
まず、「両性の合意」の「両性」、つまり「男性と女性」の間でしか結婚はできないということ。
最近の社会の状況に目を向けると、それを変える必要があるのかもしれない。それから、「憲法」の位置づけとは何か?池上さんは、「憲法」とは政治をする側を拘束するものであるということだと説明してくださいました。ただし、国民自らが権利を守るために努力をしなければならない(第12条)ものでもあります。そして、これから社会に出て行く上で、自ら行動していかなければならないことも、力を入れて話してくださいました。
池上さんご自身の経験によると、学生時代に大変優秀な女性も、社会で活躍することはままならなかったそうです。その時代より女性が活躍できるようになってきたのは、多くの女性の努力によるものであり、次の世代のためには自分たちが行動をするべきだ、とお話しをしてくださいました。今の若い世代も、さらに次の世代に引き継ぐ責任があるのです。
最後に、質疑応答の時間を設けました。
「将来のために、今どんなことを勉強しておくといいですか?」という質問には、「どんな分野のことでもいいです。未来はどう変わるかわからないですから。」
ご自身のご経験を話してくださった後だったので、とても説得力のある説明でした。後日生徒から感想を集めました。
・グループで議論したものにコメントをいただけるのは緊張しましたが楽しかったです。「差別をなくすために憲法をどう変えるべきか」のところで、憲法ではなく次の世代のために意識を変えて私たちが行動する。という意見が同じで嬉しいです。違う考え方にも触れることができて勉強になりました。・今回の授業で、勉強不足である事や自分の弱い所を痛感致しました。受け身でいるだけでは損だと強く思い、残りの4回の授業ではそんなもったいない事はしないと心に決めました。また、池上さんから「いい質問ですね!」と言われるよう目指したいと思っております。
・今は当たり前のことでも、昔の人のたくさんの努力があったおかげなのだなと思いました。
1回目の授業を受けて、将来、女性が出産などがあっても働き続けられる環境にしたり、男女の賃金の格差を無くしたり、女性が仕事と家庭を両立出来るようにするためには、今の私達が努力をしていかなければいけないのだなと感じました。・池上先生が私達の意見を深く掘り下げてくださったり、あやふやな考えを実に的確な言葉で表してくださったりと、先生のご助力のおかげで随分のびのびディスカッションする事ができて、とても楽しかったです。今までは「次の世代」のことなどほとんど考えたことがありませんでしたが、私達の視点から社会の改善点を拾い上げ、全体が問題意識を、社会への関心を強く持つことが大切だと改めて考え直しました。
2回目以降の授業では、より多くのことを吸収してほしいです。
池上先生、大変なご多忙の中、本当にありがとうございました。