2015年9月4日

⑬大学出張授業(上智大学文学部)

Filed under: お知らせ,卒業生,授業・学習・進学 — 漆 @ 6:01 PM

先日、28歳ホームカミングデーの打ち合わせで卒業生が学校に来ていました。例年、なぜか学年カラーというべきものができるのですが、この学年は元気な品女生の中でも、かなりやんちゃ度の高い学年でした。在学中、担任団は苦労していましたが、エネルギーが高い分、卒業してからの活躍はめざましく、若くして企業の海外事業開発の責任者になるなど、世界に羽ばたいている子も目立ちます。

幹事の一人は、今日、紹介する上智大学で今も研究を続けています。ドイツにも留学し、先日は、ミュンヘンに招かれて講演をしてきたそうです。「好きなことだから楽しいです!」と、この日も論文の資料を沢山持ち歩いていました。

さらに、研究者として今後どうやって道を切り開いていくかもしっかり計画しているようで、そのあたり、28プロジェクトで計画性を鍛えられた品女卒らしいなと感じました。日本の大学改革の話で盛り上がりました。

中高時代をともにすごし、28歳のときの成長を見る。この繰り返しで卒業生たちから、多くのことを教わました。おかげで在学中、多少のことがあっても、大目に見られるように私も成長しました。

では、大学出張授業、「上智大学文学部」を担当の安藤からの報告です。

2015年度 大学出張授業 上智大学文学部「英米文学と映画」
上智大学文学部英文学科 松本 朗先生

Romantic Comedy という文化の表現方法で作られた映画の興行成績は、とてもよい。
その一例として、『ノッティングヒルの恋人』(Notting Hill, 1999)を分析してみよう。

■Romantic Comedyの系譜
William Shakespeare(16世紀末~17世紀前半)から始まりロマン派の時代(19世紀)・1930年代のハリウッド映画を経て、現代のハリウッド映画・イギリス映画などに受け継がれている。

■Romantic Comedy のジャンル(以下のことが含まれている。)
・相対する2つの勢力が覇権を争う
・それによって個人の運命が翻弄される
・2種類の言語行為の交換
① 過去に関する「謝罪」
② 未来への「約束」
・2勢力が和解、恋人ふたりが「結婚」というかたちで結ばれる

■「人間と人間の関係を破壊する力」(ありそうなこと)とは?
・ギリシア、ローマの神々の争い(キリスト教以前)
・宗教戦争(16~17世紀)
・国民国家による帝国主義的戦争(19~20世紀)
・経済面での戦争(とくに1980年代以降)

■『ノッティングヒルの恋人』をRomantic Comedyという観点から分析すると
・アメリカ VS イギリス
・Hollywoodの映像メディア(未来)VS 本・文字メディア(過去・伝統)
・Hollywood(グローバルなた国籍の企業帝国 VS Notting Hill (ローカルな地域の書店)
・孤独な億万長者のセレブリティ VS ミドルクラスの友人たちの共同体
・勢力を拡張するグローバルな(帝国アメリカ)VS 小さくローカルで内向きなEngland

以上のようなRomantic Comedyのジャンルの要素を映画の中に見ることができる。
その要素は、映画の中に色々な形で表現されている。また、ポスターなどからも伺える。
その具体的な例を紹介する。

①この映画のポスター(セレブリティVS ミドルクラス)

1 このポスターの女性はANNA(Julia Roberts)というハリウッド女優のセレブリティとWILLIAM(Hugh Grant)というミドルクラスの男性を象徴している。
2 ②ローカルな地域の書店
3 ③”Square”と呼ばれる高級住宅街の庭
4 “Square”はイギリスの地図に記載されている。
この地図に記載されている”Square”は周りに建てられている数軒の家が共有する広大なプライベイトな庭である。

④ その”Square”の知識があるととてもおしろいシーンの会話がある。
ANNA : ”What’s in there”
WILLIAM : “A garden.  All there streets around here have there mysterious, communal gardens in the middle of them.  They’re like little village.  What’s great is that lots have friends that have ended up in this area.”
ANNA : Let’s go in.
WILLIAM :  “Ah, no.  They’re private.  Only the people who live around the edges are allowed in.”

WILLIAM(Hugh Grant)はこの庭に足を滑らせて入ることができなかったが、ANNA(Julia Roberts)は容易く入ることができた。これも、セレブリティとミドルクラスの象徴である。とてもユーモラスに表現されている。

5 ⑤最後に結婚して、その”Square”で暮らしている映像で終わる。

シナリオを書いている作家は、このRomantic Comedyという文化表現を意識して作成している。
文化の問題点に焦点をあて、どのように表現するかを研究している。
生徒たちも映画をこのような観点から見て、文化を研究することでさらに映画がおもしろくなったと感想を言っていた。
『文学を研究することはとても人間の生活を豊かにする』とこの出張授業を締めくくっていたところがとても印象的でした。とても興味深い講義でした。

*NettyLandかわら版に以下の記事が掲載されています。
6月号(クラブ特集)【クッキング部、ダンス部】

7,8月号(グローバル特集)【SGHの取り組みについて】