大学出張授業 明治学院大学 社会学部社会福祉学科
定期テストも終わり、私たち教員は会議、生徒は部活に励んでいます。一年は本当にあっという間ですね。学校にいると季節ごとに行事が回ってきて、文化祭が終わったと思ったら一月の合唱祭に向けて校舎に歌声が響き、6年生の受験が迫ってハラハラしているうちに、3年生は修学旅行の準備と、めまぐるしく時が過ぎていきます。
さて、大学出張授業の続きです。今回は、深刻な内容でいろいろと考えさせられました。
担当の飯塚より以下報告です。
「子どもの権利条約と児童福祉」
明治学院大学 社会学部社会福祉学科 担当教員 三輪清子 専任講師
「子どもには権利がある」ということを知っている子どもは少ないということです。
子どもとはいったい何歳までが子どもでしょうか。
18歳未満です。このようなこともわれわれは知りません。
「児童の権利に関する条約」は、1989年に国連で採択されました。日本が批准したのは1994年。196締約国・地域中、158番目でした。
子どもの権利には「子どもの最善の利益」「生きる権利」「守られる権利」(差別や虐待・搾取から守られる)「育つ権利」「参加する権利」などがあります。
今回の授業では、子どもをめぐる課題として、児童虐待と里親制度を考えてみます。
2つのプリント(新聞記事)をよんで、考えました。
「母スノボ、留守番2歳児焼死」の記事から。
1枚目のプリントの記事では、アパート2階の部屋から出火、焼け跡から2才の男の子の遺体が見つかった。母親は友人とスノーボードに出かけ、出火当時、部屋には男の子一人が残っていた。そして記事の最後に、「若い母親の身勝手な行動が死を招いた可能性が強い」と書かれていました。
しかし、その後の2つ目のプリントの記事には、以下の母親の事情が書かれていました。
「彼女は3年ほど前、両親の反対を押し切り、同い年の男性と結婚した。子どもが生まれた。しかし、男性は1年前から家を空けた。『何としても一人で育てる』という気持ちが強かったといい、母親は長男を寝かせた後、自転車で20分かけて駅前の居酒屋の仕事場に通った。調理のアルバイトで午後10時から明け方4時まで働いた。夜勤を選んだのは、時給が高かったのと、昼間は長男と一緒に居たかったから。誰にも相談しなかった。母親は不起訴となった。地域には、深夜母親が子どもを預けられるような施設はない。定期検診も行っていた。」
この事件の場合は「ネグレクト(育児放棄)」にあたるでしょう。
しかし、生徒からの質問にもありましたが、どうしたら、防げたのでしょうか。「虐待」を取り上げるだけではなく、母親も含めた環境の改善、つまり「子どもをなんとか助けるために出来ること」を考えなければいけないでしょう。
虐待の問題には、虐待をする男女(夫・妻)の比率があります。女性(母)の割合が男性よりも多い。それは、女性が、虐待すると言うことではなく、いまだに日本では、女性イコール育児という構造があるからです。
次に、なぜ、虐待してしまうのでしょうか。
一つは、子どもの頃、親に虐待されていたため、自分の子どもに虐待してしまう。
二つ目は、生活のストレスから。
三つ目は、親にとって意に沿わない子という理由で。
四つ目は、親のメンタル課題(攻撃的な性格や依存症など)。
親の孤立は、児童虐待の大きな要因です。
親への支援が必要ではないしょうか。
社会的養護・・・里親について
日本では、里親等家庭委託率が、世界の中ではかなり低い。
大勢の子ども達が職員の方々に見守られる形の「児童養護施設」などに委託されることが多いのです。
親元で暮らせない子どもは、全国で約4万5000人います。
ある絵本から、里親制度を考えました。
両親とは暮らせない姉妹のお話です。
「お父さんと姉妹と暮らしていたが、そのお父さんも病気で、姉妹だけでは暮らせなくなった。知らない里親のおじさんとおばさんに育てられ、今は、本当のお父さんとおじさんとおばさんの3人が家族というお話。」子どもの立場・気持ちから話す絵本でした。いろいろあっていい「家族のありかた」の一つの例といえます。
家族のかたちは人と違っていい、人それぞれでいいと思います。里親制度が世界的なレベルに向かうことを期待します。