18:大学出張授業(学習院大学文学部哲学科)
大学出張授業、「学習院大学文学部哲学科」を担当の三井からご報告します。
私たちは、「らしくないこと」と「あること」というタイトルで、学習院大学哲学科の小島和男先生の授業を受講しました。 まず最初に、先生のご専門のソクラテスについてお話くださいました。最も賢い人間であると神よりの啓示を受けたソクラテスは、そのことに疑問を抱き、周囲の人々との対話を繰り返します。
そしてたどりついた結論が「自分が知らないことはたくさんあるが、少なくとも周囲の人より自分が知らないことがたくさんあることを知っているだけ、自分は賢い」という事実、つまり「無知の知」というものでした。私が説明すると、あまり面白くないのですが、先生はそれを大変軽妙にわかりやすいたとえを加えながら説明してくださったので、聞いていた生徒達も次第に引き込まれた様子で、あちこちで笑い声が聞こえるようになりました。さて、本題は「らしくないこと」と「あること」について。
先生は、このお話をするにあたり、授業を受講しているある女子学生とのやりとりを例に出されました。
その女子学生は、毎回先生が課している授業後の感想を書くシートに、授業の内容とは関係なく「フランス文学科の男子とつきあいたい」という趣旨の言葉を書いてきたそうです。
理由は、フランス文学科の男子はかっこいいに違いないから。
つまり、この女子生徒はフランス文学科の男子=かっこいいという図式を自然に頭に描いているのです。このように、人は何かを言葉で表す時に、自然とそのイメージというものを思い描いているもの。
でも、実際はフランス文学科の男子がすべてかっこいいわけではないわけで、言葉はある対象の姿を正確に表現しているわけではありません。
普段考えてみたことが無かったのですが、確かにその通りです。
そういったことを考えていくのが哲学という学問だと、先生は締めくくられました。60分の授業でしたが、先生が学生との会話や、ご自分の旅行のお話などを交えながらお話くださったので、生徒達は難しい内容も興味を持って聞くことができたようです。生徒達の感想をご紹介いたします。「面白くて、思った以上の頭にスッと入ってきました」「哲学は難しくてかたいイメージだったのですが、先生のお話が面白くて、講義で聞いた考え方も納得しました」中には「美術史を勉強したいです」という意見もありました。
これは、先生が学習院大学について、詳しくお話くださったことを受けてのものだと思います。学習院大学文学部哲学科には美術史の専門コースがあり、日本全体の美術館、博物館で活躍する学芸員さんの多くがそちらのご出身だそうです。
私自身も、学芸員という職業にあこがれたことがありましたが、地方の高校出身のためこういう情報を知ることなく受験する大学を選びました。
そのことを考えると、高校生のうちに実際に大学で授業をされている先生のお話を聞くことができる生徒達の環境は、とても恵まれているなと思いました。
教室に帰り、クラスの生徒達に声をかけて他の授業の感想を聞いてみました。
みな、それぞれに聞いた授業について、口々に楽しげに語ってくれました。
生徒たちにとって、大学というものを身近に感じることのできる一日になったようです。
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