教科イチオシ見学会④県立神奈川県近代文学館
イチオシ見学会に戻ります。以下、国語科の江頭からのご紹介です。(さすがに国語科は文章がたっぷりですね。)
県立神奈川近代文学館は今回が初めての紹介です。最初ということもあり、事前に打ち合わせを行い、文学館の方に本校の生徒のための特別授業受け持って頂くことになりました。まず、県立神奈川近代文学館についての紹介ビデオを見た後で「文学館の仕事」についてのお話を伺いました。文学館の役割とは貴重な文学資料の散逸を防ぎ、後世の研究資料として温存することにあるそうです。図書館が多くの書籍を一般の方の読書のために提供し本を消耗していくのとは対照的に、原稿や創作ノートや著作などを保存することが第一の使命なのです。そのため、文学館では資料を劣化させないように様々な努力を行っているとか。作家の直筆原稿が傷まないように、特殊な中性の用紙に挟んで保管する、ポリカーボネートのシートで本や雑誌が紫外線の影響を受けないようにカバーする、大きな資料は折り目などが付かないように大きな引き出しにしまっておく、など。ただ、せっかく集め保管している資料をそのまましまい込んでいるだけではもったいないので、年に二回の特別展の企画を行うそうです。その場合には所蔵している資料以外にも他の文学館から資料を借りてきて展示したり、パンフレットやポスターを作成したりという仕事を行います。この場合、借りてきた資料毎に保険をかけるのだとか。展示用のパネルやビデオの制作も行うそうです。また、文学に関する講演会や朗読会を企画するなどの活動も行うそうです。文学館の仕事など考えたこともない人が多かったようで、どの生徒も興味津々といった様子で聞いていました。続いて、芥川龍之介についてのビデオを見ました。ビデオでは、「国際作家芥川龍之介」という視点から、芥川龍之介の作品が海外で非常に新しい文学として高い評価を得ていることが紹介されていました。黒澤明監督の「羅生門」(これは「藪の中」が原作です)はカンヌ国際映画祭でグランプリを受賞したことで有名ですが、映画としての評価だけでなく、原作者芥川龍之介への評価も含めてのグランプリであったということです。
ビデオの後には、様々な資料を見せて頂きました。「蜘蛛の糸」の原稿を所蔵しているということで、そのレプリカを見せて頂いた他、「羅生門」が最初に掲載された時の雑誌「帝国文学」の実物や、「蜘蛛の糸」を発表した雑誌「赤い鳥」の実物、芥川龍之介の単行本の精巧な復刻版、などを実際に手に取らせていただきました。
特に印象的だったのは、「羅生門」の復刻版です。和紙を用いてあり、他の本が「一円五十銭」程度の値段なのに対し「五円四十銭」もした高級品。ページを一枚一枚自分でカットしながら読むように出来ていて、自ら装丁を手がけたという芥川の意気込みを肌で感じることができました。
最後に現在の常設展示についての軽い説明を受けた後、ワークシートを片手に常設展を一通り見終わって解散しました。生徒達には馴染みが無かったようですが、「太宰治」「安部公房」「大岡昇平」「三島由紀夫」「村上龍」など錚々たる作家達の自筆原稿や手紙などが展示されており、なかなか見応えがありました。(ちなみに生徒の皆さんは、石原慎太郎が石原裕次郎の兄だということを知らない人も多かったようです!)
帰り際に、感想を訪ねてみたところ「期待以上に楽しかった」という声を多く聞きました。また、文学館の方も「生徒さん達にお話しするのは初めてでしたが、実物を手にとって見て頂くことで興味や関心を引き出せたようでうれしいです」との感想を頂きました。
(写真:写真は、「蜘蛛の糸」の原稿のレプリカを見せて頂いているところです。鈴木三重吉による赤ペンの書き込みの意味するところを文学館の方が解説して下さっています。)