2009/11/25 水曜日

早稲田大学出張授業 4年生対象 ②

カテゴリー: 授業・学習・進学,早稲田大学 — 漆 @ 15:12:44

二講座目は教育学部英語英文学科  新井 巧磨(あらいたくま)先生の授業です。先生の専門分野のお話しに加え、専攻分野によって学部が変わる、仕事にどう英語が活きるか等々、ちょうど文理選択で進路を具体的に考える時期の生徒にとっては興味深い内容だったようです。

担当の梅田からご報告いたします。気合いが入って長文です。

この講義では、言語学、英語学、その中でも特に「語用論」を中心にお話ししていただきました。またそれだけでなく、大学で学ぶ英語の中身や研究領域についても、とてもわかりやすく説明していただき、受講した49名の生徒たちは、英語についての興味、関心をさらに高めたようです。それでは、生徒の感想を交えながら、講義の内容を振り返りたいと思います。

1. 英語との付き合い方を考えた進路選択を!

まず「大学での“英語”って?」というテーマで、大学で学ぶ“英語”は、今、高校で学習している“英語”とどこが違うのか、またどこが同じなのか、という話からスタートしました。

大学での英語は、<文学><文化><英語教育><英語学><コミュニケーション>の5つの領域から構成されており、学部によって主となる研究領域が異なるということです。例えば、文学部であれば<文学><文化>を中心に、外国語学部であれば<英語学><コミュニケーション>を中心に研究するということです。

生徒たちが知っている“英語”というのは、ここでいう<コミュニケーション>の領域に入りますが、それ以外にも様々な研究領域があると知って、生徒たちは非常に興味を持ったようで、新井先生の説明に聞き入っていました。

またちょうど今、文理選択の時期にある4年生は、自分の進路や大学の学部についても考えているので、同じ“英語”でも、その研究領域によって学部が違うということに新鮮な驚きを感じたようです。

(生徒の感想)
・英語英文学科の授業なので、英文学だけの話だと思っていましたが、言語学の話が聞けて面白かったです。
・英語の奥深さを知りました。
・大学での「英語」が5つに分けられていることに驚きました。
・英語はあまり得意じゃないけど、もっと勉強して深く知れる学部に行きたいなと思いました。
・自分は理系を目指していたが、今回授業を受けて、英語にも興味を持った。視野が広がってよかった。                  

_mg_0410.jpg(写真:留学生も参加しています)

2. どんな職業についても、英語は必要!

 次に新井先生からは、「将来、君たちがどんな仕事に就いても、英語とコンピュータだけは必須!英語はできて当たり前、という時代になってきている」というお話がありました。

確かにその通りですね。生徒たちの中にも、この言葉が印象に残った生徒が多くいて、講義中にとったメモにも、「英語はできて当たり前!!」というフレーズが多く見られました。

(生徒の感想)
・どんな職業でも英語は必要だから、あらためてとても大事だと思った。
・英語を話せることは、今の社会では必要不可欠なようなので、今はまだまだだけど、話せるようになりたいと思った。

3. 言語学を応用すれば、学習や仕事で役に立つ!そして日常生活も楽しくなる!

 そしていよいよ、新井先生のご専門である、「言語学」「英語学」の話へ。新井先生は英語学の中でも「語用論」を研究されているそうです。「語用論」とは、言語表現とそれを用いる使用者や文脈との関係を研究する分野です。

 新井先生が次のような一文を生徒たちに提示しました。 

<男も女もなぜこんなに飛ぶようになったのか?>

「これを読んで、この一文が何を言いたいのかわかりますか?」と先生。生徒たちは一生懸命考えていました…が、なかなか難しいようで、声が上がりませんでした。確かに難しいですよね。そこで先生が、
「これだけでは何のことかわかりませんが、それでは、この一言を付け加えてみると、どうでしょう?」

…と出てきたのが、<ゴルフダイジェスト>の文字。
そうなのです。これは雑誌『ゴルフダイジェスト』の記事の見出しなのです(新井先生が電車の中づり広告で見つけられたそうです)。<男も女もなぜこんなに飛ぶようになったのか?>という言葉は、「ゴルフ」という場面の中で初めて意味を持つのです。

 このように、一種の記号である言語というものを、それを使う人や状況、場面とのかかわりの中でとらえ、研究するのが「語用論」という分野だそうです。

 また、英語における「時制の一致」や、<One-word Communication>についても興味深い話がありました。<One-word Communication>というのは、お互いに一つの単語だけを使って会話を進めていく状態ですが、その会話が行われる場面を考えることによって、それぞれの一単語をどのように発音するか、すなわち、語尾を上り調子に読むのか、下がり調子、あるいは平坦な調子で読むのか、が判別できるというものです。

「時制の一致」はちょうど先月あたりに英語の授業で出てきた内容だったので、生徒たちにとってもタイムリーな話題で、「あっ、それこの前勉強した。」と声が上がっていました。

(生徒の感想)
・単語だけでも言い方を変えるだけで会話が成り立つのを聞いて驚きました。英語にもっと興味がわきました。
・イントネーションやアクセントは何となく答えを選んだりしていたけど、これにも意味があって大切なことだということがよくわかりました。
・難しい単語や文法を使わなくても、工夫してシンプルに物事を伝えられるよう、これから積極的に英語を話す勉強をしていきたいと思いました。
・新井先生に「語用論」のおもしろさについて教えてもらったので、すごく興味を持ちました。

4. 英語にも敬語(politeness)がある!

 そして最後に英語のPolitenessについてのお話がありました。「寒いので窓を閉めてほしい」ということを頼むとき、頼む相手によってその頼み方は変わります。

例えば、先生、クラスメイト、ケンカをしている相手…この三者だけを考えてみても、それぞれに対する頼み方は変わってきます。先生に対しては、“Could you close the window?” などと言えるでしょう。しかし、ケンカしている相手には、 “I feel cold.”と言うだけかもしれません。

このように、場面や状況に応じて、それにふさわしい言語表現をすることは、心地よく楽しい日常生活を送るのに必要な要素だと言えそうです。

(生徒の感想)
・英語に敬語などがあることにびっくりです。
・英語にもpolitenessがあって、丁寧な言い方より、カジュアルな言い方(Hey! Let’s close the window.など)が面白かったです。