大学出張授業⑥【昭和大学薬学部】
火曜は、SGHの特別講座で元駐米大使藤崎先生に起こしいただきました。長く国際交渉の場にいらしたご経験から生徒たちに、グローバルといったときの誤解など、様々なお話しをしてくださいました。この様子は後日詳しくご紹介しますね。
昨日は、生徒会選挙があり、先ほど、当選者の発表がありました。本校は学習・行事・部活の三つを大事にしています。将来、家庭に仕事に大切なマルチタスクを抱えてもしなやかに生きていってほしいと思うからです。その柱の一つ、「行事」を回す役員、委員もすべて立候補の仕組みです。みんなのために手を上げて、苦労はするけれど、周りに喜ばれ自分も成長する。そんな先輩がかっこいいという文化ができているような気がします。これも将来、チームで仕事をできる人に育ってほしいとの願いを込めた仕組みです。
28プロジェクトの28歳の手前には18歳の進路選択があります。それを考える一助となるように行っているのが大学教授出張授業です。希望者も多い、医療系、薬学部の先生の授業を担当の飯塚から報告します。今後テクノロジーの進化で、薬の選択はAIでもできる時代が来るかもしれません。しかし、患者さんの立場に立って新薬を開発していくことや、心を支える対人コミュニケーションは人間の仕事として残る分野だと思います。変化の激しい時代にあって変化の可能性の高い職種を選ぶ人は、未来に向けてアンテナを立てておく必要があるでしょう。
卒業生の中に、理系は苦手だけれど、家族の病気をきっかけにどうしても薬学の道に進みたいと、猛勉強をして合格を手にした子がいたことを思い出しました。
昭和大学 薬学部 亀井大輔 准教授
新しい薬学教育の動向 ~これから薬学部を目指す皆さんへ~
内容は、2つです。
平成27年に改定された薬学教育と昭和大学薬学部についてです。
薬学系大学の教育が大きく変化しました。今までの薬学教育は、対物(薬)に関しての教育でした。しかし、これからは、対人業務についてです。つまり患者さん中心の教育に変わりました。
薬剤師さんは、今までは調剤業務や薬の情報提供、薬歴記載の3つが中心でした。これからは患者さんへの薬効の評価と副作用のモニタリングに対して重きを置きます。
教育もそれに従って、変わっていきます。文科省の新しい薬学教育が以下のことがらになっています。
薬学教育のコアカリキュラム(薬剤教育の質保証のための基準)を行うこと。
大学はコアカリキュラムを70%、大学独自のもの30%を行う。
薬剤師として求められる10の資質(薬剤師としての心構え・患者生活者本位の視点・コミュニケーション能力・チーム医療への参画・基礎的な科学力・薬物療法における実践的能力・地域の保健医療における実践的能力・研究能力・自己研鑽・教育能力)。
大学教育で国家試験までに薬剤師として基礎的な能力が身につけるため、大学の4年次・5年次の間に薬学共用試験がある。
などでした。
続いて昭和大学のお話です。
薬学系大学は、74大学75学部あります。
昭和大学は、その中で、医系総合大学としての特長を生かしているということです。
1年次、富士吉田市で全寮制教育を行っています。医学部・歯学部・薬学部・保健医療学部の相互の考え方が理解できます。また、病院実務実習を行い、学生がチーム医療の中に薬剤師として患者さんに接して服薬を考え、効果などをみていき、実際の治療に参加し実践的能力を身につけます。授業終了後に数分間、大学のビデオを見ましたが、このチーム医療に参加した学生が真剣に生き生きとしていたのは、すばらしかったです。
授業最後に、患者さんの副作用をモニタリングするため、薬剤師も行うバイタルサインの測定を実践しました。今回は、両手の脈拍を測定することです。
親指下あたりの橈骨(とうこつ)動脈を3指で当てて、15秒測定します。その結果を踏まえて、以下の事柄を確認します。
・脈拍に左右差(強弱)があるか。
・脈拍数
・リズムについて。
左右差があるとどちらかに血行障害があります。
徐脈(脈拍数が1分間で60以下)の人は、薬剤のジキタリスやβブロッカーの副作用、あるいはスポーツ心臓が考えられます。
頻脈(脈拍数が1分間で100以上)の人は、心拍出量低下(心臓から出る血液の量が少なくなります)が懸念されます。薬剤のテオフィリンなどの副作用が考えられます。
リズムが一定でないのは不整脈が考えられます。
医療に興味がある生徒が多いので、生徒同士、和気藹々と行っていました。
お医者さんや看護師さんのようなバイタルサイン測定を行うのは、薬による副作用があるかないかなど参考になることが多いからです。
生徒からの質問では、在宅の人の訪問薬剤師について教えてくださいということでした。
その答えとしては、入院中の患者さんは多くの医療従事者が関係できるが、在宅患者さんはそれができない。どうすればよいかというと、地域のお医者さんと地域の薬剤師さんが連携を取ります。お医者さんが在宅患者さんを見ます。その後薬剤師さんは直接患者さんの所へ訪問して薬の効き目や副作用を確認します。その情報を地域のお医者さんに伝えて、参考にしていくということでした。
良い質問なのでわたしも感心しました。
生徒達は、充実した時間を過ごして自分の教室に戻っていきました。