2015年5月13日

55周年の式辞をふりかえって

Filed under: オススメ,卒業生,行事 — 漆 @ 5:00 PM

今日は、2年生が文化祭のテーマ決めをしているのをちょっと覗きました。3年生ではデザイン思考が進んでいます。高等部は起業体験の役割別の説明会(保護者の専門家がご協力くださいました)、6時間目は生徒総会でした。生徒達が次々と新しい事を考えて実行していくのを頼もしく見ました。

さて、コラボをさせていただいたキユーピーマヨネーズは発売90周年、本校も90周年、これも何かのご縁かと感じています。90年の間には戦争もあり、いろいろな時期を乗り越えてきました。

式典の写真は後ほど、ご紹介しますが、この機会にこれまでの周年行事の記録を調べてみました。

kou  その中に55周年の記念式典の際の校長(漆光)の式辞を見つけました。品川ファミリーの皆さんと本校の歴史をふりかえる資料としてご紹介します。

私共の学校は元品川小学校の跡を譲りうけまして、敷地は680坪位。少しでも校地を広げようとして、毎年のように少しずつ買収。買収に明け買収に暮れたと云っても過言ではありません。
特にこの時代は、日本が大変な歴史を作って来た時で、このむずかしい世の中を経て55年、本校が今日あるのは、自分達の力だけで出来たものとは到底考えられない、55周年の記念式は大方のみな様に感謝申し上げる所存から計画されたものです。矢張り私達は人の世話にならないで生きていくことは出来ない、たまたまどこかでお目にかかった人の配慮で、私達は伸びて行くのではないかなと、こういう事をつくづく考えるわけです。

私共の学校の校歌は、与謝野晶子先生に昭和10年につくっていただきました。私は当時27、8歳です。
荻窪の晶子先生のお宅に伺いました。晶子先生は微笑を浮かべながらお迎え下さいました。最初にうかがったお言葉が、「私にもあなたと同じ名前の息子がいるんですよ」という言葉です。たまたまご長男の光(ひかる)様と(私は「コウ」と読みますけれども)同じ名前であったということで、このような大きな親しみをお示しいただいたものと、私は今になってわかるわけでありまして、やはり人間にはこういう最初の出会い、一寸したことで後年ひじょうな影響を受けるものであると思われます。
私は本校に就任して48年、校長になって28年経っています。学校の教育方針までが、いつの間にか、私共がお願いして作っていただいた校歌の内容とすっかり同じになり、いわば同化されてしまったという事でしょうか。

生徒のみなさん、おそらく今の世の中は、物質的な考え方でも或いは精神的な考え方でも、簡単に言えば“ギヴ アンド テイク”の世の中である。ただ間違えていけないのはギヴが先であって、テイクは後である。大人の世界でも時に先にとる事だけしか考えない人が多い世の中でありますので、その点をよく考えていかねばならない。

_MG_1101 ←現在の校舎の薔薇の写真

私共はバラを周辺のテラスに植えております。毎年この頃になると、見事にさいてくれます。しかし、それもほったらかしておけば枯れてしまいます。私はこういう記念行事に、せっかくお客様をお呼びする以上はお客様に喜んでいただく、これは何もその場を作ったという事にはならないのだという事を生徒にも言いました。矢張り人を迎える時には、正しい礼儀、人に喜んでいただく私達の誠意を示さなくてはならんと。幸に皆さん、うちの生徒、よくきいてくれまして、今年は一本も枯れておりません。見事に咲いておるわけなんでありまして、つまり、ギヴ アンド テイクですね。どうかそういうような事、一つ、生徒諸君は考えて、これから、私達の先輩が残していったいい評判を、更にそこにあなた方が、何かをつけ加えていくという、こういう事を私はお願いしたいと思います。

そうして、少しずつでも、この学校の成果が世の中の人達に認められれば、それが、私達の伝統が物を言ったことになろうかと思いますし、とりも直さず、それがまた、あなた方へ、ギヴしたものが戻ってくるわけなんであります。それをとることができる、テイクする事ができると私は考えるのであります。

礼儀が大事、ギブが大事と常に言われていたことを思い出しました。今、本校が社会の皆様のお力で生徒がいろいろな体験をさせていただいているのも、先人の天への貯金のおかげなのかもと感慨深いです。

校歌をお願いしたのが28歳というところにも28プロジェクトの縁を感じます。この話の通り、私が小さい頃、今は西棟になっているグランドには民家がポツポツと建っていました。引っ越しの噂を聞くと、すぐに訪ねていって本校にお譲りいただけないかとお願いするその繰り返しでした。その祖父について行き、一緒に玄関で頭を下げていた記憶があります。そうして今のひとまとまりの校地にしていったのです

「学校は隣が空いたらすぐに交渉、そのときに備えて日頃、紙一枚も無駄にしてはいけない」繰り返し言っていたことを思い出しました。

 ①  ←私がこれくらいの大きさの頃でした。東棟の噴水のある場所です。
 11 現在の本校の写真です。手前から第一京浜→東棟→西棟→JR。緑に見える西棟屋上テニスコートの左隣の空き地が、新校舎を建築する予定の南校地です。