2016年2月19日

⑭教科イチ押し【宮内庁書陵部】

Filed under: 日本,社会 — 漆 @ 6:18 PM

教科イチ押しの続きです。実際に教科書で学んでいる古典にふれることは新鮮な体験だったと思います。私も大学で変体仮名の本を読み、活字とは違う書いた人の息づかいの感じられる文字に、千年前にタイムスリップしたような感覚を味わったことを思い出しました。

時代によって社会の仕組みが違っても、人間の感情は変わらないことに興味を惹かれ、古典の世界に入っていきました。今、グローバル社会の中で、ダイバーシティーが大切と言われる時代に、古文書を通し、同じ国の違う時代の人の思いにふれることで、様々な価値観を受け止める視野が広がるような気がします。

「百人一首がカルタでなかったと知って驚いた」という感想を読み、笑ってしまいました。担当の伊藤より報告します。

 

国語科のイチ押し見学、5年生は宮内庁書陵部を訪問しました。

宮内庁書陵部の成り立ちは古く大宝律令にある中務省図書寮。その庁舎は皇居東御苑の中にあります。この機関では、その名のとおり宮内庁の文物を納めます。管理されている本も貴重なものばかりで、歴史的にも日本最古といわれる本から近代の世を作った基盤をなす大切な史料まで、さまざまなものがおさめられています。

かつて江戸城本丸のあった場所の近くに存する書陵部の建物に立ち入ること自体が貴重なため、そわそわと案内の方に続く生徒達の後ろで、引率の私も緊張していました。

まずは3階の会議室で宮内庁でのお仕事と資料の解説をしていただきました。

組織図や所掌事務のお話、採用への流れのお話(公務員試験を経るものと、研究分野での独自採用)、実際の職務内容など、普段触れることのない世界のお話に生徒達は目をまるくしていました。公務員試験を受けることに驚いていたり、独自の採用の「その場で古文書を読む」という実技試験に絶句したりしていました。

資料の解説では、なぜこのような古い文書が大切なのか、教科書で学ぶ歴史をつくっているのは何なのかというお話を新鮮な思いで聞いている様子でした。そして今回の資料の貴重さをご教授いただき、貴重な機会だということをあらためて感じていました。

そしていよいよ地下の閲覧室へ(この日のために資料をならべてくださいました)。

かぐや姫の絵巻に始まり、「堤中納言物語(虫めづる姫君、習いたてでした!)」や「古今和歌集」「源氏物語(若紫)」、現存する最古の「小倉百人一首」や「百鬼夜行」の絵巻など。私たちにとって興味の持ちやすいものをお選びいただいて、かつ、読めるかもしれない項を展示してくださっていました。

巻物体験をしてみたり、変体仮名を初めとしていろいろ気になるところを質問して解説していただいたり……気が付いてみればあっという間に終了時間。担当の方と話し込んで少し時間をオーバーするほどでした。

貴重な史料を間近で見られる機会に巡り合えて、生徒たちはそれぞれにいろいろと感慨深かったようです。

本物に触れること、このような文化の継承のうえに、今の私たちの学問は成り立っているのだということ、そしてそれに従事している研究者の方々がいること、色んなことを間近で感じられた様子でした。

以下、感想の抜粋です。

・研究者という職をまったく考えたことがなかったけどとってもかっこいいなと思いました!
・資料の説明では、今まで古典で勉強した文章もあり、お話や資料見学はとても面白かったです。特に驚いたことは、百人一首の元はかるたではなかったことです。また、色々な資料を間近で見ることがないので、とても貴重な体験でした。絵巻なども実際に触ることができて、楽しかったです。
・私たちが普段使っている教科書が大変な苦労の上に成り立っているものだとは知りませんでした。今まで古典文学はあまり興味がなかったのですが、今回の見学で古典は現代の作品にも影響を与えていることを知り、古典をちゃんと勉強する気になりました。

見学終了後、少し東御苑内の散策の時間も取り、天守や松の廊下など、思い思いの場所を見てまわっていました。いいお天気のなか紅葉も綺麗で、落ち着いた時間を過ごしていました。

宮内庁書陵部① 宮内庁書陵部②