親を亡くした子のグリーフケア
今日は、「AIMS」という、親をがんで亡くした子ども達の心のケアと健全な成長のサポートをしている団体を紹介します。
現在、子どものグリーフケアを行う知識を身につける講座を開いたり、コンサートを企画したりしています。私も応援しています。
生徒たちには話したのですが、この団体を設立したのは、元NHKのアナウンサーで、本校でも講演をしていただいたことのある、小林真理子さん(旧姓高井)です。講演では、仕事をテーマに楽しいお話をたくさんしてくれました。
入社してすぐに地方に配属になり、家を探す暇もなかったので、しばらくは局に寝泊まりしていたこと。初めてのアナウンスがさんざんで、帰りのタクシーで運転手さんから「今日のアナウンサーは・・・」と言われ、自分ですと言えずに目が合わないよううつむいていたこと。でも、どんなときも「仕事は楽しく」がモットーであること。アナウンサーは早起きで大変だけど、だんだんと原稿を読むだけでなく、自分の企画を提案することもできるようになったこと・・・・。
卒業生の中には、こうしたお話に影響を受けて、今、仕事の世界に羽ばたいている子もいます。
明るく朗らかでお話が楽しく、一緒にいるだけで元気になるような方でした。それが、去年、突然、末期癌であることがわかり、入院しました。まだ小学校に入る前のお嬢さんがいたので、将来、相談役になれればと私も何度かお見舞いに行きました。
体重が落ち、起き上がることもだんだんつらそうになる病床で、「自分の運命は受け入れられる」「でも遺される娘のことが心配」そして、「娘と同じ境遇の子供たちのケアをする団体を立ち上げたい」と話していました。
そうして夏を経て、秋の訪れとともに、お別れの時が来てしましました。
最後まで前向きに、人のためになることを自分の幸せとして生きた方でした。
彼女からのメッセージをご紹介します。
創立者メッセージ
AIMSは、私の個人的な体験から始まりました。 私は、42歳。6歳のひとり娘がいます。元気が取り柄で、風邪も何年もひいたこともありませんでした。 そんな私が、胃がんのステージⅣ、卵巣にも腹膜にも転移していると、余命を告げられたのは、今年の4月のことです。3月まで、スキーに行ったり、海で娘と一緒にイルカと泳いだり、何の自覚症状もなかっただけに、晴天の霹靂とはまさにこのことでした。 私の場合、自分の病気や余命は比較的すぐに受け止めました。でも、何より心配だったのは、幼い娘のこと、特にその心でした。 娘に、私がいつかこの世を去ることをどのように伝えたらいいのか。そして、私の死後、幼くまだ十分に自分の思いを周囲に伝えられない娘の心のケアはどうしたらいいのか。 その思いを、主治医の先生や、親しいカウンセラーなどに相談したり、自分でも、インターネットで調べたりしていく中で、日本は、死に関する悲しみのケアが遅れていると知りました。海外では、一般的にグリーフケアと呼ばれています。少しずつ、海外で研修を受けたチャイルドライフスペシャリストと呼ばれる専門家もでてきましたが、まだ、人数も少なく、一般的に認知されているとはいえません。また、どこかの病院に所属している人がほとんどで、その病院に通っていなければ、そうしたチャイルドライフスペシャリストと関わることも難しい状況です。特に、子どもを活動の中心において、長期間に渡ってケアするサポートは見つかりませんでした。
そうした現状を知り、もっと広く子どもの心のケアが必要なのではないかと思うに至り、AIMSの設立を思いたちました。
まずは、海外や国内の現状をリサーチし、もっとたくさんの人に心のケアの必要性、心のケアとして具体的には何ができるのかなどを知っていただくことから始めたいと思います。そして、将来的には、カウンセラーの育成や、サポートプログラムを提供できるようにしたいと夢をふくらませています。
このメッセージも、あと私に残された時間がどのくらいなのかわからない時に病床から書いています。でも、私がこの世を近い将来去っても、私の経験がAIMSを通して少しでも活かされることは、希望を与えてくれます。
この世を無念にも去らざるを得ないパパやママの希望に少しでもなり、そして、残された最愛の子ども達の心の手助けができれば、幸いです。
2011年8月 43歳の誕生月に
AIMS代表 小林真理子 - 故人 – 2011年9月9日死去
私の母も40代で末期癌であることが分かりました。
自分の経験から、また、同じ立場の生徒たちから教わったことを、入院中の彼女に伝えました。
*子供が将来ぶつかるかもしれない壁に、言葉を残してあげる。成長の過程で、お母さんに相談したいときに見られるように。
*自分がかわいがられていたこと、親孝行は充分していたことを伝えておく。(親孝行ができなかったと後々悔やむ子は多いのです)
*年頃になったとき、相談役になるサポーターチームを作っておく。
そして、生徒のお母様方、同じ年頃の卒業生のみなさんにお伝えしたいことは、定期的に検診を受けてほしいということです。
女性はどうしても家族のことが先になり、自分のことが後になりがちです。
女性には女性特有の癌もあります。それが発症する年齢が子育てや仕事で一番忙しい時期に重なるのです。
どうか、ご自分のため、ご家族のため、検診を受けてください。大切なお子さんを預かる教員の立場から、母を亡くした娘の立場からお願いします。