2020年3月24日

生物実験特別講座

Filed under: 授業・学習・進学 — 漆 @ 12:40 PM
オリンピック延期の報道もあり、先の見えない状況に社会不安が広がっています。無症状の中高生が移動することにより、感染を拡大する可能性も高いとのことなので、一人一人が自覚をもって協力していくしかないと思います。情報の真偽を見極めるメディアリテラシー教育の重要性を感じています。
そんな中、京都大学の山中伸弥先生が、個人として、情報発信をなさっています。
コロナウィルスに対して様々な切り口からの客観的な情報がシェアされて自分の頭で考えることができ、大変参考になります。
https://www.toriaez.jp/q1541/

さて、今年度の特別講座の紹介をしていきます。担当教員が報告コメントをくれることになっています。毎年行っている、生物実験講座の様子を担当の山崎より報告します。

◇生物実験特別講座◇

 実際に大学で研究をなさっている方のお話を伺う機会として,首都大学東京の福田公子先生に特別講座を開いて頂きました。4年生の理系に進む予定の生徒と,5年生は生物選択の生徒だけではなく物理選択の生徒も参加しました。

実験「顕微鏡を使用したニワトリ胚の観察」

 まず手順に従って,有精卵から胚を取り出します。最も身近な単細胞である卵ですが,将来のニワトリの体になる「胚」は一体どこにあるのか?卵の中身の説明を受けながら,注意深く胚だけを取り出し,シャーレに移していきます。

今回実験に用いるのは,産卵から2日間暖められてきた有精卵です。食用の卵を割った時とは匂いが異なり,「生きている」ということを実感しました。

1995年にDennis Newが発表した方法に基づいて実験をします。取り出した胚は,シャーレの中でしばらく発生させることができるそうです。

 続いて,シャーレに移した胚を,実体顕微鏡で観察します。記録のために写真・ビデオ・スケッチなどを思い思いに残していました。スケッチは,自分が強調したいものだけを残すことができるので,非常に有用な方法だと改めて感じさせられました。

 最後に,観察結果をもとに発生の進み具合を推定し,何故そう考えたかを論理的に説明してみます。何を基準にして発生の進み具合を判断するのかは,自分たち次第です。班で協力して,班にある9つの胚を発生順に並び替えてみます。

品女の生徒たちは,心臓や眼などが「有る」「無い」という分け方から,「はっきり発達している」「小さいかも」と発達段階を自分たちで考えて組み立てていましたが…。より注目すべきは体節の「個数」だったようです。定量的な差には気付けなかったこと,細かく観察し,比較することの大切さを学びました。

講義「何故高校や大学で勉強するのか?〜生物学から見た人生〜」

 ニワトリ胚の表皮が何に分化するかは,その時に接している中胚葉の種類によって決まります。細胞と細胞が接していることでこのシグナルが伝わるのか,それとも水溶性の物質がリガンドとして放出されることで近傍の細胞が誘導されるのかを確かめるために,どのような実験系を組めばいいのか考えてみました。

 まだ分かっていないことを実験で確かめるためには,論理的に思える力や,既存の方法をうまく組み替える柔軟性などが必要なことを伝えて頂きました。また,生体を使っていると,思わぬところで邪魔が入り,うまく行くと思ったやり方でうまくいかない,ということが起きることも教えて頂きました。

 今回の実験と講義では,教室の授業で習ったはずの言葉も沢山登場しました。今日受講した生徒たちには,実践する時に活きる知識の身につけ方を意識するきっかけになったと思います。福田先生,ご準備頂いた研究室の方々,有難うございました。

 

こうしたことがきっかけで将来研究の道に進む卒業生も出ており、今の勉強がその先の何につながっているか考える機会となっています。私は、今、教育現場と、研究の知見と、教育政策をつながなければならないことを切実に感じています。
上記の山中先生の発信も、専門分野は違っても研究者としての知見があるからこそ、社会へ分かりやすくシェアすることができているのだと感じます。特別講座がそんな種をまく一助になれば幸いです。

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