手嶋龍一さんの講演
先週、4年生・5年生の総合学習で、手嶋龍一さん
(元NHKワシントン支局長、現在は、作家・外交ジャーナリストとして活躍中、慶應大学教授)
に講演をしていただきました。
将来に向け、国際的な視野を広げるという目的です。実体験に基づいた豊富なエピソードを交えてユーモアたっぷりにお話しくださいました。この場にいなかった学年にも聞かせたかったので、その中から3つのお話しを紹介します。
◆女性の活躍の場
アメリカでさえ、女性の活躍の場が広がってきたのは、最近のこと。女性で初の最高裁判事、オコーナー氏は、「女性である私が法律家として活躍することを、誰もが無理と思っていた。ただ、一人、母親だけが『あなたの未来は広々としている。あなたの、勉強をしたい、仕事をしたいという夢を阻む物は何一つない。』と言い続けてくれた。」と語っていた。
ライス長官が、若いとき偶然ホワイトハウスの前で撮った写真がある。彼女は後年、「この頃は、女性で黒人である自分の未来が広いものだとは思ってはいなかった。」と言っている。
テロの検挙で著名なニューヨークの検察トップ、メアリー・アン・ファイト氏も、ロースクール仲間で、自分より成績の劣った男性が次々と弁護士事務所に就職していく中、なかなか職に就けず、遙か遅れて検察に入れたという。
このような環境が、ここ数十年で劇的に変化している。今、女性の活躍の場は限りなく広がっている。
◆真の国際人とは
真の国際人に必要なことは、英語を上手に話すことではない。国際社会で尊敬される人は、自国文化のバックボーンがある人。英語はコミュニケーションの手段にすぎない。
ある時、仕事上で困ったことがあり、スペインの友人に電話をした。新聞社を経営している超多忙な彼は、スケジュールを見てこう言った。「今からお互い、中間地点のバミューダーアイランドまで飛んで、そこの空港で待ち合わせをしよう。3時間だけなら時間がとれる。」そして、実際、相談にのってもらい、問題を解決することができた。
もし、自分が英語を話せる、アメリカ流の考え方を身につけているだけの人間だったらこの友情は成立しなかった。
国際社会では、互いが自国文化のバックボーンを持ち、その異なる文化的背景を乗り越え、自分の意志を伝え、相手の価値観を理解するところに尊敬と友情が生まれる。
◆将来のためにしない方がいいこと
この世界も、みなさんの未来も広がっている。その将来に向けて進路選択で、「しない方がいいこと」が一つある。
それは、「人がいいというから、○○が得意だから、と大学や学部を選ぶこと」
そういう基準で進路を選び、あとで悩んでいる人を多く見た。
「人の価値観」でなく、「自分の価値観」。自分に聞いて自分が納得した道に進むことが大切。
熱心に聞く生徒、ちょっと難しいかなという表情の生徒、高校1,2年生の時点でのとらえ方は様々だったと思いますが、この先、人生の岐路に立ったとき、思い出してほしいようなお話しでした。
(最後に、質疑応答で、「高校生の時は?」「なぜNHKに就職したか?」という質問があったのですが、このお答えが、ここまでのシリアスな雰囲気とうってかわってあまりに正直でリアル、ここでは紹介できないような内容。この部分は、全員が理解したようで、かなり、ウケてました。)
手嶋さん、生徒の将来のため、お忙しい中、ボランティアで来てくださり、ありがとうございました。