制服の一部変更
いつもは結論から言いたい私ですが、今回は変更の背景、経緯、結論という順番で長くなりますが、おつきあいください。
平成元年にスタートした学校改革の一環でセーラー服を現在の制服に変更してから、すでに20年近くがたちました。
校長を説得するのに一年かかり、年度途中でゴーが出ました。次年度送りにしないために「半年で仕上げる!」と決めました。当時はやりのデザイナーズは高く、生徒を知らないので機能的にも今ひとつ。そこで、思い切って私がプロジェクトリーダーになり、自分たちでデザインすることにしました。
大切にしたことは、「毎日着るものなので、着ていて楽しく、着心地がよく、思わず自慢したくなるようなものにしよう!」です。全国の制服を調べ、制服ショーに通い、素材の研究をし、洋服店を回り、何度も何度も会議を繰り返しました。
そうして、これまでの制服にない色を選び、アイテムを選べる楽しさを加え、常識だった制服素材をやめ、着心地のいい婦人服素材を使った試作品ができました。
まずは身内に発表、思わぬ批判を受けました。「制服らしくない」「これなら前の方がまし」「派手すぎて葬式に着て行かれない」・・・中でも卒業生から「セーラー服が好きでこの学校を選んだのに」といわれた言葉は心に刺さりました。
なんとか内部を説得し、外部発表にこぎつけ、購入希望の多かった在校生への販売を自由にした時、次のような電話がかかってきました。「うちの子には買ってあげられないのに、回りの子が買ったらかわいそう。上級生は買えないことにしてほしい」申し訳なくて涙が出ました。
もし、あの時どこかでくじけていたら、今も本校の制服はセーラー服だったかも知れません。
制服に限らず、様々な改革に取り組んできて学んだことは、「全員を幸せにする改革はないということ」「先を見た改革ほど多くの人に反対されるということ」そして、「新しいことは常に予想外のリスクを伴い、言いだした人間はそれを引き受けなくてはならない」ということです。
さて、このような歴史を持った制服ですが、来年度から一部変更をすることにしました。以下にその経緯を述べます。
本校では今年度、夏服を新しくしました。在校生は自由購入ですが、現在、中1の8割が持っています。来年度の新入生からは衣替えを行い、夏は全員が着用することになります。(経緯は12月13日、2月13日、5月11日の日記をご覧ください)
この変更は、急激に進む地球温暖化にともない環境問題に配慮したものです。大人の社会でもクールビズが奨励されていますが、学校も多くの生徒が生活する場所なので、特に夏の消費エネルギーはかなりのものになります。暑いときは涼しい服装で冷房温度を上げ、教育機関として少しでも環境に配慮したいと考えました。
それにともない、このままだと指定購入アイテムが増えてしまうという問題が生じました。(夏スカートが指定になると成長によっては6年間で2枚プラスされる場合も考えられます)
さらに、これまでも「中等部で背が伸びてあと少しで高校なのに赤スカートを買い直す」という問題がありましたが、今後、温暖化で夏服を着る期間が長くなると、「あまり着ていない赤スカートを買い直す」という「もったいないこと」も起きてしまいます。
長くなりました。結論です。
来年度の新入生からは「秋冬のスカートは、中・高ともに高等部の青スカートに一本化し、中等部生は青系のリボンタイに変更する」ことにしました。
在校生は自由購入です。詳細については、本日、終業式で私から説明し、保護者の皆様へのプリントを生徒に渡しました。
中等部の式では経緯から話しましたが、変更をつげると、どよめきが起こりました。新入生のこととはいえ、今、自分たちの着ている赤いスカートがなくなるショックはよく分かります。それだけこのスカートに愛着があるということで、それはこれを作った私も同じ気持ちです。
高等部はさすがでした。中等部から既にそのニュースがすれ違い様に渡っていて開始前はざわざわしていましたが、始めに結論を伝え、これから説明するのでしっかり聞いてほしいと言ったところ、いつものように静かに最後まで聞いてくれました。一人ひとり色々な思いはあるはずなのに、それを飲み込んで相手の話を理解しようとしてくれる態度にジーンときました。
中等部では涙ぐんでいる生徒も見えたので、わたしもかなり落ち込みましたが、あとで高校生がやってきて「先生、ずっと変わらないことなんてないんだから、わけも知らずいろいろ言う人がいて大変だと思うけど、頑張って」と励まされました。
生徒達には、自分たちや自分の学校のことだけでなく外の世界のことを、今のことだけでなく未来のことを考え、視野を広げて受け止めてもらいたいと思います。
卒業生、保護者の皆様、本校を志望する皆様、上記のような理由による変更であることご理解ください。
*明日から夏休みです。日記も不定期になります。
*月曜からの中2の新潟での宿泊行事は、「先日の大きな地震の余震注意期間であること」「高速道路を降りてから数時間、山間部に入ること(週末の天候によっては地盤がゆるむことも考えられます)」を考え、安全を優先し見合わせることになりました。詳細は本日プリントをお渡ししました。