教科イチ押し見学会 お茶の水女子大学大学院
今日はイチ押しのつづきです。
一般公開されている施設以外にも教員がいろいろなつてをたどってお願いし、特別に見学をさせていただいています。
若い生徒達の前には多くの選択肢と可能性が広がっています。だからこそ迷うことも多いと思います。
この見学も、お忙しいところ、何人もの先生方、学生さんにお世話になりました。こうした「学校ではできない専門的な体験」が、将来進むべき道に光を照らしてくれることと思います。
お茶の水女子大学大学院の見学について、担当の茨木よりご報告いたします。
お茶の水女子大学大学院へは4年生7名、5年生7名の計14名でお伺いしました。研究内容についての講義をしていただいた後、研究室を見学させていただきました。
まずは糖鎖がご専門の貞許先生から「多様な甘くないお砂糖」についてのお話しをうかがいました。
「糖鎖」とは、糖(例:ブドウ糖)がつながってできたものです。細胞の表面にも存在し、細胞と他のものの結合に深く関わっています。例えば、ABO式血液型を決めているのは、赤血球の表面にある糖鎖の種類です。赤血球の表面にA型の糖鎖をつける酵素(タンパク質)をもっていればA型、B型の糖鎖をつける酵素をもっていればB型、両方もっていればAB型、もっていなければO型というわけです。
インフルエンザウィルスの感染にも糖鎖は深く関わっているそうです。インフルエンザの型として「H○N○」というのを聞いたことがあると思うのですが、これは表面の糖鎖の種類だそうです。
タミフルは、この糖鎖の一部に働きかけることで体の中でインフルエンザウィルスが増えてしまうのを抑え、症状が重くなるのを防いでいるそうです。
身近な話題に触れながら、例えを使ってわかりやすく説明してくださったので、
「糖によって血液型まで決まる事に驚いた」
「病気にかかるしくみがわかっておもしろかった」といった感想が聞かれました。次に発生がご専門の佐野先生にお話ししていただきました。卵から大人になるまで、からだがどのようにできてくるのか、その仕組みを研究されています。
カエルの発生を動画で見せていただいたのですが、卵が次々に細胞分裂をし、胚となり、どんどん変わっていくその姿にみなさん釘付けになっていました。
「では、細胞はただ増えるだけで大人の形になるのでしょうか?」という先生の問いかけに首をかしげるみなさん。すでに学習したはずなのですが・・・。
細胞は数を増やしたあと、①実際に働く場所に移動し、②それぞれが役割をもち、③一緒に働く細胞と結合することが重要とのことでした。胚の様子がどんどん変わっていったのは、必要な場所への「移動」の表れなのです。
この他にも「イヌは卵からうまれるのでしょうか?」「研究って何?」など、問いかけながら講義を進めて下さったので、頭をしっかり使いながら講義を受けることができたことと思います。
最後に分子進化学がご専門の小倉先生に講義をしていただきました。
ヒトとタコ、進化的には大きく離れていますが、「カメラ眼」というとてもよく似た眼をもっているのだそうです。なぜ、生物種としては遠く離れているのに、こんなにもよく似たつくりの眼をもっているのか。
それを研究されているそうです。ゲノム(生物がもつ全ての遺伝子の情報)についてもお話しいただきました。ヒト一人のゲノムを解読するのに、最初は15年かかりました。各国のあらゆる研究機関が一番乗りをねらい、競争をして15年です。
2003年のことでした。それが現在の技術ではたった4分でできるそうです。つまり、4分で自分が何の遺伝子をもっているのか、全てわかってしまうということです。研究が進めば、例えば遺伝子によってどのような治療方が有効かがわかり、それにあわせて薬を処方したり、その他の治療をしたりする「オーダーメイド医療」も可能とのことでした。
また、マンモスや恐竜のゲノムを解読するプロジェクトがあるそうで、それらの生物を復元することも可能かもしれない、とのことでした。
印象的な内容が多く、後で先生に質問させていただく姿も見られました。
講義の後は研究室を見学させていただきました。理系志望の人が多いこともあり、熱心に取り組んでいました。少しずつ近づいている大学進学を意識しながらの今回の見学は、とても良い刺激になったことと思います。
ご協力いただきました先生方、お忙しい中、どうもありがとうございました。