2009/12/5 土曜日

特別講座 編集の仕事 ②

今日はテスト前に質問のできる最後の日とあって、職員室前だけでなく、玄関で教員を待ち構えている生徒まで。今年最後のテスト、頑張ってます。

私は今日の夕方、早稲田大学の教職希望者対象の講演会に出かけます。以前、講演したとき参加していた学生で、今、本校の教員になっている人もいるので、本校の方針に賛同してくれる熱心な仲間を迎えるためにもこういう機会は大切にしています。

さて、昨日の続きを江頭から。(今日も長文です。)

第2回目の授業は、最初に藤田さんが編集者になるまでのお話から始まりました。 高校生の頃どんな学生だったか。藤田さんの人となりを知って、生徒達はすっかりファンになってしまった模様。

その中で、特に印象的だったことは、学校の勉強では特に国語が得意だったというわけでもなく、数学が好きだったということでしょうか。数学はシンプルで誰にでも分かるような答えが出るというところが魅力だったそうです。 そして、実は、数学は編集の仕事に役立つのだとか。

それを聞いたときは、一瞬どよめきが起こりました。が、話を聞くうちに、みんななるほど、と納得した様子。  特に、証明の問題。仮定が正しいことを証明していくために、根拠を一つ一つ積み上げていく、というのは正に編集の要なのだとか。 論理的な思考力を鍛えるという点でも、数学の勉強は大切。

これを聞いた生徒の感想には、

「編集長は数学が得意だと向いているかもしれないということを言っていましたが、私は数学が大の苦手でどうしよう!!と思ってしまいました。でも、なりたいので、がんばります!」というコメントが。 (・・・その後、彼女の数学の成績がどうなったのかは知りません(笑))。

 「先生の編集者になるまでのことを聞いて、一見関係ないことでも、どんな教科でもきちんとやるべきだと感じた。私も数学が得意で先生と似ているなと思った」というコメントもありました。頼もしいですね!

 今の勉強が、実は社会に出たときに必要な力の基礎になっているのだ、と分かったこの生徒達の今後の伸びに期待したいと思います。

続いて、「週刊ザテレビジョン」を毎週発行するまでの大まかな流れについて、具体的にお話ししていただきました。毎週水曜日の発売日に向けて企画会議を開き、色々な人が提案した企画の中からどれを採用するかを判断する。そして、それらを規定のページ数に収まるように「台割」という本の設計図を考えるのが編集長の仕事なのだそうです。

 この「台割」の実物を見せていただき、実際できあがった雑誌とつきあわせて、どういう仕組みになっているか説明していただきました。そこに隠されている様々な工夫について聞いたときには大興奮!なんと、テレビ誌としての役割を終えた後、読者がとっておきたい記事を保存しやすいように、との工夫までされていました。

毎週60万部を年間で49冊と年末年始の特大号(430万部)を合わせ、全部でおよそ3370万部。この発行部数は、日本で一番。売れてる雑誌にはワケがあるんですね。  

この「台割」の話の後は特集ページの作り方についての説明を聞き、生徒達に特集ページを作ってもらうべく、グループワークを行いました。  まず、6班に分かれて班ごとにタレント役を一人決めます。そして、そのタレントの「きのう一日」について残りのメンバー全員でインタビューをします。

その際に、一つの質問について一枚のポストイットを使い、思いつく質問をどんどんしていきます。次に、そのタレントの魅力を伝えるにはどういうテーマで記事にしたらいいかを考え、テーマにそった情報のみを選別して並べ替えていきます。流れがだいたい決まったら最後に読者の興味を引くようなタイトルをつける。それまでが、課題です。  

img_4344.jpgよいタイトルをつけるコツも教わりました。「おや?」「まあ!」「へぇ!」。

この3つの中の2つ位が入ったタイトルをつけるといいのだとか。読者の興味を引くようなタイトルになっているかどうか、この日教材に使った「ザテレビジョン」の特集記事のタイトルを参考にしながら、この3つの要素の持つ意味を説明していただきました。

また、「読者の知的温度を上げる」という言葉も教わりました。これは、藤田さんが常に念頭に置いている言葉なのだそうです。記事を読んだ読者が、少しでも「これを読んで楽しかった!」「もっと、これについて知りたい!」というようなワクワクした気持ちにさせてあげられるかどうか。それができる雑誌作りを目指している、というお話しは、とても印象に残るものでした。 

 インタビューの活動を終えて、第2回は終了です。まだ記事を書くことはしませんが、次の授業でこのインタビュー結果をみんなの前で班ごとに発表することになりました。もちろん、タイトルをつけて。このグループワークは本当に盛り上がりました。   以下に生徒の感想をいくつかご紹介します。  

 ・ 藤田さんのことが色々とわかりました。私も一般的な考えで編集の仕事をしていらっしゃるのだからてっきり国語が得意な人なのだと思っていました。なので、数学が得意だと聞いて驚きました。また、藤田さんが「編集は仮定をたてて、その仮定に対して様々な具体的な情報を集めて証明することだ」とおっしゃっているのを聞いて、編集って数学に近いものがあるのだと納得させられました。雑誌の方では私が知らなかった業界用語や雑誌の工夫などを知ることができて驚きました。また、雑誌作りの裏側を知ることができて嬉しかったし、またもっともっと雑誌編集に興味を持ちました。グループで一人インタビューを受ける人を決めて、残りの人がインタビューをするという作業は思ったよりとても難しかったです。次回までにしっかりとグループ内で発表できるように頑張ります。「知的温度」という言葉には本当に納得させられました。  

・ 先生の、編集長に至るまでのお話しを聞き、それまで私は大学や学部を高校生の段階で決めることで自分の将来も決まってしまうと思っていたため焦っていましたが、特にそういったことは関係ないんだと安心しました。自分の中で興味のあることや得意なことはきっとそんなにぶれることはないと思うので、(先生だったら人を楽しませることや証明などのように)落ち着いて生きていけばいいんだなと思いました。また、テレビジョンの遊び心に感動しました。

・ 今回のお話しを聞いて、編集について新しい情報を知ることができました。「相手に伝えること」を第一に考えて雑誌を作ることの大切さを知ることができました。実際の「テレビジョン」の1週間の作り方、工夫のしかたや編集の用語など、新しく知ることも多くて、興味がさらに高まりました。グループに分かれて意見を出し合うのも、思ったより質問が出てこなくて、難しいと思いました。