早稲田大学連携授業(教育学)・文化祭DVD
昼休みの職員室前。中間テストが迫り、生徒達は朝、昼、放課後と、校内のあちこちで勉強しています。昨日は4年生でも早稲田大学連携授業が行なわれました。これは5年生向けに行なっていただいたときのものです。 |
担当江頭からの報告です。
早稲田大学連携授業(教育学)「大学と受験の歴史」
担当講師:園田麻祐子先生そろそろ大学受験勉強に本格的に取り組み始めた5年生ですが、「そもそも何故、大学なんてあるのか?」「大学は何のためにできたのか?」といった根本的な疑問をふと抱いてしまう瞬間は誰にでもあると思います。
今回の授業では、そうした日常の受験勉強の中でふと抱いてしまう素朴な疑問にお答えいただけました。まず、日本には「大学」はいつからあるのか、という質問から授業は始まりました。
先生が生徒に指名すると、「明治時代から」という答えが出たのですが、答えはずっと古く、「大学寮」という官僚養成機関ができたのは日本では天智天皇の時代、西暦600年代にさかのぼるのだそうです。続いて、「では、官僚養成機関というよりは、現在の大学と同じような教養としての学問を追究するための大学が生まれたのは、いつ頃のことでしょうか?」という質問。
これには「明治時代」「戦後」など様々な答えがでました。
正解は、「1088年イタリアのボローニャ大学」。
イギリスのオックスフォード大学、フランスのパリ大学がそれに続き設立されたそうです。
日本では、1872年の学制発布により全校を8つの大学区に分け、1873年に大学南校(後の東京開成学校)、1873年に大学東校(後の東京医学校)が設立された後、1886年の東京帝国大学令により両校が統合されて東京帝国大学が設立されたのが始まり。
私立大学は、最初は専門学校としてスタートし1918年の大学令により大学になったそうです。早稲田大学は1882年に政治家やジャーナリスト養成のための東京専門学校として、慶応大学は1868年に経済人、実業家養成のための慶應義塾として設立されたというのは有名な話ですね。
その他、中堅技術者養成のための東工大、商業専門の東京商科大(現一橋大学)、医科大、教師を養成するための高等師範学校など専門家養成のための学校も設立され、高等教育機関は現在のように大学のみではなく、複線式の制度だったそうです。ここで質問。
「当時、女性が進学を認められていた大学はどこでしょうか?」
生徒からは「医科大だけ」「全部だめ」など色々な予想が出されました。正解は「女子高等師範学校、東京女子医大、現津田塾大学、日本女子大学、東京女子大学」くらい。
女性が高等教育を受ける目的は、基本的には教養を身につけて、高等教育を受けた男性の妻としてふさわしい嫁ぎ先を見つけるためだったこと、女性が職業を持って自立していくには、医者になるか看護師になるか教師になる以外はほとんど道がなかったということです。
これを聞き、生徒達はとても驚いた様子でした。また、明治時代には高等学校に入学する際に試験があるだけで、高等学校から大学へは試験無しで入学できたそうです。(夏目漱石の「こころ」の「先生」と「K」はその頃の学生ですね)。
大学入試がないなんてうらやましいと生徒達は思ったのではないでしょうか。しかし、最初は士族の子弟が大学進学を目指すだけだったのが、次第に士族以外の子弟が「立身出世」を目指して大学進学をめざすようになり、明治15年当時は1.5倍だった旧制高校の受験倍率は、明治30年には5倍にまで達し、この頃から日本は学歴社会に入っていったのだとか。
この当時は高校受験が受験戦争の場になっていたのですね。そしてこの頃から立教大学などの私立大学が続々と設立され、大正時代以降、大学のブランド化が進んだ、と聞き「自分たちが受験戦争で苦しむルーツはこの頃にあるのか」と思った生徒も多かったようです。
やがて戦後、教育の平等化が目指されて現在のような6-3-3制になったものの、この学歴尊重という価値観は変わらず、現在でも高校間競争が大学の合格実績によってなされるといったことが起きているのはこうした背景があってのことだと知って、生徒達は複雑な表情をしていました。最後に、「大事なことは、その選択が自分の将来(職業)とどのように結びついているのかを考えて大学を決めること。」というメッセージをいただいて講義は終了しました。
偏差値だけでなく、かつて女性が許されていなかった職業選択の自由を手にしていることに感謝しつつ、自分の将来の道を自分で歩んでいくために大学受験という機会を上手に生かして欲しいという先生の思いが伝わってきました。
園田先生、ありがとうございました。
*9月14日にプリントを配布しましたが、文化祭DVD(クラス発表準備風景、体育館舞台発表、閉会式)販売の申し込み期限は明日(21日)までです。申込用紙をなくした人は職員室前にあります。ダイジェスト版を明日まで昼休みにカフェテリアにて放送します。(問い合わせ先、株式会社 水の和 03-4590-0521)