2012/8/11 土曜日

⑦大学出張授業(日本女子大学・人間社会学)

カテゴリー: 授業・学習・進学 — 漆 @ 15:33:19

担当の横井からの報告です。

日本女子大学 人間社会学部 心理学科 金沢 創 准教授
「赤ちゃんから見た知覚世界」

心とは何か?
金沢先生の今までの研究の経緯と心理学とは
どんなものかというところから授業が始まりました。

心とは、大きさ・形・重さ・位置などはありません。でも、存在しています。
では、どのように心を感じ取っているのでしょうか。
心理学というとカウンセリングなど臨床心理学のイメージが強いけれど、心を感じ取る感覚や知覚についても扱うのも心理学なのです。

そこで、前半は様々な知覚体験をさせていただきました。

・反対色:ネガのような色の写真を30秒凝視した後、
白黒の同じ写真を見るとカラーに見える。
・色の恒常性:同じ色でも周りの色が明るいところと
暗いところでは違って見える。
・明るさの恒常性:同じ色でも光の当たっているところと
陰のところでは違って見える。
・陰影からの構造復元:上下を逆にしただけで凹凸が
逆に見える。
・空間周波数:アインシュタインに見えていた写真が
ピントを変えるとマリリン・モンローに!!

これらの不思議な知覚体験を通して、普段いかに何も考えずに見ているかということに気付かされました。中には、不思議すぎて何が起きているのか理解に苦しんでいる生徒の姿も…
このような目ではなく脳の中で行われる計算を明らかにしていくのが「実験心理学」です。

では、赤ちゃんの見ている世界はどのような世界なのでしょうか?
生まれて間もない赤ちゃんが見ている世界は、私たちが見ているコントラストの1/100程度しか見ることができず、きりのかかったような世界だそうです。
それが成長とともに視覚は発達していき、生後2~3ヵ月では動きから形を判断できるように、5ヵ月では重なりが分かるように、7ヵ月になると複数の奥行きの手がかりを統合できるようになるそうです。

そして、視覚に関しては18~19歳まで発達するとのことで、まだまだ発達途中ということを知った生徒たちは喜んでいました(グラフを見ても明らかに、発達が終わり、退化し始めている私にはそう見えました)。
赤ちゃんの研究は、他の方面でも活用されています。
例えば、自閉症の人の場合、形は見ることができるけれど、動きを見るのは苦手であり、文字を読むことも得意でないことが多いです。
ところが、赤いメガネをかけただけで、文字がすらすら読めるようになり、ボールもキャッチできるようになったのです。
このように赤ちゃんの知覚の研究は様々なことに生かしていく可能性を秘めています。

金沢先生の研究室は年間700人もの乳幼児の研究をしている日本最先端の研究室なので、たくさんの貴重なお話を聞くことができ、金沢先生のお人柄もとても気さくだったので、生徒も一体となった大変楽しい授業になりました。
ありがとうございました。

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*今回授業をしてくださった金沢先生が出演なさいます。
放送大学『乳幼児心理学』
日曜日8:15~ 10月1日放送開始(全15回)

*明日から17日までは閉校期間です。校長日記もお休みします。

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