早稲田大学連携授業 教育学(英文学)
今朝、いつものように玄関に立って挨拶をしていると理事長が、
「生徒たち、二宮尊徳だな」
今は、定期試験中。必死の形相で本を読みながら登校してくる生徒の様子を見ての一言でした。
生徒のみなさんは知っているでしょうか?私たちが子どもの頃、小学校の校庭には、薪を背負って本を読む二宮少年の像があったものです。
(気持ちは分かりますが、歩きながらは危ないし、注意が散じて周りの方に迷惑をかけることもありますから、せめて止まっているときにしましょう)
さて、早稲田大学連携授業のつづきです。瀬戸口からご紹介します。
「イギリス・ゴシック文学史『オトラントの城』から『放浪者メルモス』まで」教育学部 市川純先生
留学生も参加しました。 |
みなさんは「ゴシック」と聞いて何を思い浮かべますか。なんとなくではありながらも、馴染みのある「ゴシック」という言葉ですが、その起源はイギリスにあります。先生のお話はそこから始まりました。
18世紀後半にはじまったゴシック文学。その歴史は1500年を超えます。なにしろ話のスケールが大きく、生徒はどのくらいイメージができているのだろう、と思って様子をうかがっていました。
そこで具体的に文学作品や作家の紹介になりました。いくつかの物語について、先生が少しだけあらすじを紹介してくださったのですが、まさに興味津々といった様子で生徒は話を聞いていました。
そもそも人は、架空であれ真実であれ、物語を聞くということ自体が好きなのだと思います。そうやって「おとぎばなし」や「むかしばなし」は長年にわたって語り継がれてきたのですから。様々な時代背景や文化の差異はありながらも、話を聞いて「おもしろい」と思うことは世界中共通なのでしょう。生徒の反応を見ながらそう思いました。
ゴシック文学というのは、基本的に「気味の悪い話」でなりたっていて、結果的に現代の探偵小説の元祖にもなっているそうです。「先生はどうしてゴシック文学に興味を持ったのですか。」という生徒の質問にも「怖い話に興味があったから」と答えていらっしゃいました。これを聞いて「それだったら自分も」と、きっかけをつかんだ生徒がいたかもしれません。
最後に、一番印象に残ったことをひとつ。「ゴシック文学を学んで将来どういうことに役に立てるのか」という生徒の質問に対して先生は、「役に立ちませんね」とのお返事。
将来に直結する技術とか知識とかそういうわけではないけれど、読んだ文学作品の中に、人間のありかたや心理の奥深さなどを、簡単に言葉では表現できないようなことを感じた。だから、将来役に立つかどうかという基準で選んだわけではない。そういう答えでした。
生徒たちはこれを聞いてどう思ったでしょうか。大学は早くいい職業に就いて、バリバリ活躍するために必要な知識を身につける場―そういう考え方のもとに大学を選ぶのもひとつ。一方で、最後のひとことを聞いてまた別のなにかを見つけた生徒もいたかもしれません。