⑩早稲田大学連携授業(人間科学部)
今日、明日は保護者と担任の面談日です。
早稲田大学連携授業の続き、担当の大川から報告です。
私も2年前にサウジアラビアに行き、様々立場の女性と話し、それまでの自分に思い込みがあったことに気づきました。
また、先日は日本を代表するような僧侶の方から、大学ではイスラム学を専攻し、中東に留学していたと伺い、驚きました。
グローバル時代には、偏見を持たず、まずは体験し、様々な文化への共感力を深めることが大切だと感じました。
「イスラーム社会の女性」
人間科学部 大川 真由子 先生まず、人間科学部と先生の研究を紹介していただきました。人間科学部は、環境・情報・健康福祉の3つの側面から人間を総合的・学際的にとらえる視点で研究を行うという学部であり、大川先生は、社会人類学の中東地域研究の専門とされ、オマーンで現地の人たちと衣食住をともにしながら、フィールドワークを行い、データをとり、研究を進めていらっしゃいます。ふだん、あまり知る機会のない、イスラーム社会の女性について、先生の実体験を交えながら講義をしていただきました。以下、講義の概略です。
1ムスリムについて
ムスリムは、中東地域に多く、人口は約16億人で、これは世界の人口の約5分の1 にあたり、2030年には、世界の人口の約4分の1をムスリムが占めると予想されてい る。日本では、イスラーム社会の女性は抑圧されているというイメージをもたれがちで ある。しかしながら、世界経済フォーラムの指標によれば、日本もオマーンも100位以 下という点では同じである。何を指標として、はかるかということが問題となる。『コ ーラン』によれば、「男性は女性の擁護者。神が男性の方を強くし、女性を弱くつくる。 だから、男性が金を出し、女性を養う(男性は女性を扶養しなければならない)。男女 の役割や機能が異なるのであって、それは男女の上下や優劣ではない。」2ムスリム女性のファッション
髪を出さない、身体の線がわからないようにする、肌をできるだけ出さないというの が原則だが、地域差も大きい。女子高生のファッションについては、コートの中などは 日本の女子高生とかわらない。ベールやスカーフは多様であり、色・素材・巻き方など に変化を持たせ、ファッションを楽しんでいる。3結婚
結婚する際、男性は女性に結納金(マハル)を払わなければならず、結婚に必要な現 金・ウェディングドレス・貴金属・香水・式場代・新居などはすべて男性持ちである。 また、イスラーム社会は一夫多妻(妻は4人まで)で知られるが、マハルの負担が大き いので、2人以上の妻がいるのは、全体の1割程度。2人以上の妻がいる場合、いずれ の妻も平等に扱わねばならず、夫の遺産も複数の妻で平等に分配する。そもそも一夫多 妻の仕組みは、社会的弱者を作らないためのものである。4イスラームの教え
女性は慎み深く、美しいところ(髪など)は夫のみに見せるので、外ではヴェールで 髪をおおう。また、女性は外ではスッピン、家ではドレスを着て化粧をする。イスラー ム女性のヴェールは抑圧の象徴で、ミニスカートや肌の露出は自由の象徴というのは、 欧米や日本の価値観であり、自文化中心主義の現れ。イスラーム社会では、神が男女を 別につくったから、男女平等・同権でなくてよいという考え方。イスラーム文化など、 外の文化を見ることで、比較が可能となり、比較は共通性を見いだすことにもつながる。最後に生徒たちの感想をあげます。
「今までの考えと全く違うお話を聞き、とても驚きました。日本の女性も同じレベル なのですね。比較してみても同じところがたくさんあっておもしろかったです。男女平 等が日本では重視されているように感じますが、イスラームのような制度もありだと思 いました。」
「もともとイスラームの国は男女格差の激しい地域という印象があったが、むしろ女 性が日本よりも生き生きとして、大切にされているのだなと感じました。世界史の授 業が現在イスラームの範囲なので、少し先入観のようなものを取り除いて授業を受けら れそうです。
「イスラーム女性は抑圧されていると思っていた。全然イメージと違っていて、女性 はすごく幸せだなと感じた。違う視点からイスラームの女性について知ることができて、 異文化を見る目は大切だなと感じられた。」
生徒たちも、イスラーム社会や異文化に対する眼差しが変わったようです。貴重なお話をありがとうございました。