特別講座(新聞から読み解く政治)
今日は穏やかな日差しが差し込む一日でした。中高とも模擬試験だったので、校内もいつもより静かでした。
社会科の特別講座の様子です。講座の内容はもちろん、講師の横田さんの仕事や生き方に感銘を受けた生徒が多かったようです。生徒には将来のロールモデルになるような方との出会いをこれからももうけてあげたいです。
担当の窪田からの報告です。
特別講座「新聞で読み解く政治」を実施し、3~5年の希望者が参加しました。
講師は、毎日新聞政治部記者の横田愛さんです。横田さんは、3年前に同名の講座の際、本校に来ていただいたことがありました。そのとき強く感銘を受けて、政治の現場で働きたいと進路を決めた生徒がいたという方です。
折しも10月1日に、首相から「消費税を予定通り来春から8%にする」という発表がされたばかり。政治の最前線で取材をしている横田さんにとっては、ヤマを超えたばかりのタイミングであり、また担当している自民党政調会長が当日は地方へ出張ということで、多忙なスケジュールを縫って来てくださいました。
1.新聞記者になるまでと、駆け出し時代 高校3年生の夏まで、プロのピアニストをめざして本格的に活動していたそうですが、一転進学先を変更して、そこから本格的な受験勉強をしたそうです。大学時代は、海外で様々な経験をしたとのことです。
新聞記者は、地方支局から下積みをスタートさせます。事件・事故や高校野球の取材などをされていたそうです。2.政治部について
政治の取材はチームで行うので、各々担当している政治家につきっきりで、夕方まで現場で取材をし、その後本社に帰り原稿を執筆します。それぞれの担当が書いたことをまとめて、見出しがつけられ、記事になっていきます。とにかく担当している政治家が動いているときは、自分も必ず現場に同行し、緊急でも呼び出されて常に取材をするそうです。3.政治報道の大切さ
生活のあちこちに政治が決めた仕組みやルールがあります。
たとえば、消費税が上がることを決めたのも政治、学校の制度を変えようとしているのですが、それを決めるのも政治、病院を受診したときに払う金額を決めるのも政治、生活のあらゆることに政治は関わっています。このような意味で、政治報道をすること、そしてそれに触れることはとても大切です。
4.新聞によって、主張が違う たとえば、今回の消費税の例をとっても、新聞記事の書き方によって受け取る印象は違ったものになります。「○○新聞の立場は××だから、こういう報道になります。」と具体的に説明してくださいました。1紙しか読んでいないと、その報道が「事実」と思ってしまいがちですが、そのことにも気をつけてみる必要があるのです。
5.新聞には「ストレートニュース」と「検証記事」がある
ストレートニュース…その日に起きたこと、新しい事実をできるだけ早く伝えるための記事。
検証記事…なぜそういう結論になったのか、などについて、深く掘り下げた記事。早く伝えることが大切なストレートニュースとは違い、少し時間が経った後にまとめて掲載をします。上記のようないくつかの種類の記事を組み合わせて、新聞の紙面はできていきます。
6.質疑応答
長い時間を質疑応答にあてて下さったため、たくさんの質問が出て、丁寧に答えてくださいました。Q.一つの記事を書くのに、どのくらいの時間がかかるのですか?
A.取材をしたその日のうちに書きます。Q.ネタ切れのときは、どうするのですか?
A.つらいです。たとえば、今年の夏は何も起こらず平穏だったため、ニュースがなくて紙面を埋めるのが大変でした。そんなときには、連載企画を組むとか、普段はできないインタビュー記事を載せたりします。前もって記事のテーマが社内で募集されることがあるので、各自アイディアを持ち寄ります。この夏は自分が提案した「憲法について」のロングインタビューをシリーズで掲載しました。Q.社論と自分の意見が違う場合はどうするのですか?
A.毎日新聞は基本的に「署名記事」なので、記事の内容に自分で責任をもつためにそのようなことはあまりありません。どうしても決まった方向性で書きたくないときは、「書けません」と言います。Q.記者の方はとても忙しいように見えますが、いつ休んでいるのですか?
A.朝刊・夕刊の部署が違うので、夕刊の部署は決まった時間に働ける場合が多いです。家庭を持つ人は、希望してそのような部署に移る場合もあります。とくに政治部は働き方が激しいので、女性の割合は少ないです。後日提出された感想を一部紹介します。
■「政治関係の記事を書くときは、担当している人にずっとついていき取材していくということを知り、驚きました。みんなの家に届く新聞に込められた思いなどを知ることができてよかったです!」■「新聞に書いてあることは必ずしも全てが正しいわけではないので、丸ごとうのみにせずに読み比べて、それをもとに自分の意見はどういうものかを考えることが大事だということがわかった。」
■「横田様が、『一日中国会にいることもある』ということに驚きました。情報を得るために、自分のプライベートな時間をつぶして一生懸命働く姿がとてもかっこいいと思いました!新聞を作ることの大変さを知ることができました。
■「横田さんの講演のおかげで、私に夢ができました。
私はもともと、自分の見たことのない世界などを実際に自分の目で見て、考え、意見を持ち世に発信していきたいと思っていました。けれども、どんな職業につけばいいのか全然わからず、あやふやのまま、特定の夢もなく、過ごしてきました。
しかし、横田さんの話を聞いて、やはり自分の目で見たものを世に発信し、問いかけてみる、そして、『人と人をつなぐ』そんな仕事がしたいと改めて思いました。
〈中略〉
将来、今思っているような職業についているかわかりませんが、たとえついていなかったとしても、夢に向かって努力したことや、体験したことは決して無駄にならないと思っているので、このまま頑張っていきたいと思っています。本当にありがとうございました。」
とても意義のある時間を過ごし、価値のあるものになったと思います。お忙しい中お越しくださって、ありがとうございました。
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