2008/11/15 土曜日

社会科特別講座 人道援助④

このシリーズ最終回です。担当の、住谷から生徒の感想など当日の様子をご紹介します。

11/6(木)の放課後、中1~高3までの希望者45名を対象に社会科特別講演会を行いました。今回は国内外の紛争地帯・被災地で人道援助を行っているNGO、JENの事務局長、木山啓子さんに来ていただきました。

ニュースではしばらくすると報道されなくなる被災地の様子ですが、救援活動はその後も続いており、例として今年5月のミャンマーのサイクロン被害が挙げられました。まず、木山さんらJENのスタッフがどういった手順を経て向かうのか、というお話がありました。

 実際にミャンマーでは緊急支援として3000軒もの竹で作った仮住居を作り、それにあたり誰がそこに住むことができるのか、あえて住民同士で話をさせ、自立が難しい家庭から優先させるようにしたそうです。この話し合いを通してまずは住民間のコミュニティを復活させることから始めたそうです。

また、政府からは「竹の家は貧しさの象徴だからやめてほしい」という声もあったそうですが、本来の住民の文化が竹の家であるということを尊重し、続行したところ、逆に政府からは多くの人が住居を確保できたということで感謝されたそうです。

ここで生徒たちは意見を求められました。
竹の家の高さは4m、それに対し暴風雨で上がった水位は3.6m、これでまた翌年サイクロンが直撃したら、再び住民は家をのみ込まれることになってしまう、それなら二度と流されることのないよう鉄筋コンクリート造りの家を建てた方がいいのではないか、と。

kiyamaappu.jpg(写真:話し合い中の生徒達に木山さんが話しかけています)

鉄筋コンクリート造りの建物は費用がかかり、竹の家3000軒分の費用で、2軒しか建たない。同じ被害に遭うとしてもひとまず多くの人を救うべきか、それとも数は少なくても確実に被害を避けられるようにすべきか、生徒たちは熱心に考え意見交換をしましたが、意見は2つに分かれました。

そこで木山さんは一言、「これには正解はありません。人道援助に“これが絶対正しい”ということはないのです」とおっしゃいました。迷いながら、それでもその場その場で判断をしながらやっていくしかない、これが人道援助の実態なのだと。そしてそのためにもプロジェクトはやって終わりではなく、必ず住民とスタッフの双方で評価をし、今後の支援につなげた上で続いていくのだとも。

お話の最後に、日本で平穏に暮らす私たちに何ができるかについて、各地に苦しんでいる人がいる、助けを求めている人たちがいるということに対し、①知る②行動する③継続する④忘れない⑤伝えるの5つ、ぜひ取り組んで欲しいと話されました。

生徒たちは壮絶な被災状況に驚いた上、その中で行われた支援が決して正しいとは言い切れないということに大きな衝撃を受けたようです。講演会後、質疑応答をしたところ、たくさんの生徒から質問が出ました。

■人道支援の勉強は仕事に就く前からしていたのか(→全て現場で手探りで学んできた)

■現地での会話はどうしていたのか(→現地語が話せなくても英語を使うことができれば会話は可能)

■なぜ誘われていた国連での勤務を断りNGOを選んだのか(→NGOでやったことが評価されているということであり、出世などにとらわれず自分のできることをやっていきたかった)

■この仕事のやりがいは何か(→生きる気力を失っている人が前向きになれるのは決してお金やものをもらったときではなく、その人が誰かの役に立っていると感じたときであると気づき、その場面に遭遇したときに感動できる)

さらには終了後、応接室まで追いかけて質問をし、すぐに何かやってみたいと述べる高等部生もいて、木山さんはその生徒に対し「明日の自分は今日作る」という名言を下さいました。生徒たちの関心の高さ、そして多くのことを学んだという充実感を感じました。

社会科ではこれを受け、「生徒たちが自分たちで継続的に行うことのできる人道援助のあり方を考え、実行する」特別講座を進める予定で、講演会に参加した生徒もできなかった生徒も多くの生徒のもとで進めていければと考えています。