2012/5/10 木曜日

「競争の意義」をあえて語ると

カテゴリー: その他,保護者,校長のオススメ — 漆 @ 15:08:37

体育祭での熱い戦いぶりと一体感、6年生感動のラストを見ていて、「競争の意義」について一言。

一昔前に、小学校の徒競走で順位を付けないために手をつないでゴールをするということの是非が話題になりました。(実際に見たことがないので都市伝説かもしれませんが)

私は生徒たちを見ていて、競争には意義があると感じています。

本校には、「チーム戦」の機会が数多くあります。(「戦」という文字はふさわしくないかもしれませんね。ここでは、みんなで力を合わせてよりよいものを目指すという意味で。)

総合学習の企業コラボや起業体験でのプレゼンはコンペ形式。行事では、体育祭のほか、合唱祭や文化祭でも賞が出ます。部活では試合やコンテストに向け学年をこえたチームで目標に向かいます。

「賞を取る・勝つ」という明確な目標=ゴールがあるから、どうやったら達成できるか考える、計画を立てる、自分を律してつらい練習もする。

チームの力を最大限に出さないといけないから、メンバー一人一人のいいところを引き出し合う、失敗をフォローし合う。互いに言いにくい改善点も指摘する。

勝ちたいから、ほかのチームの優れたところを取り入れようとする。 夢中になるからプロセスも楽しめる。 ゴールにたどり着いたときの達成感は、その後、つらい壁に当たった時、自分はできるという自信になって支えてくれる。

そして、ここが大切なのですが、負けた時には、頑張った分、悔しいからどこが悪かったのか、次はどうしたらいいかと学びが身体に染み通る。

私がいつも感動するのは、賞が発表されたときの拍手です。みんなが目標に向かって頑張ったからこそ、勝った人たちの努力をたたえることができるのでしょう。

「先生、朝練に出ない人がいるんですが、賞に向かってやる気のある人だけでやるか、みんなを説得するか、先生だったらどうしますか?」

「自分が長になりたかたのに、副になってはじめはいやだったけど、チームのためにはフォロワーも大切な役だと気づきました」

「強い言葉で言うとみんなが動いてくれないけど、やさしくお願いすると動いてくれる」

「普段、同じクラスの友達でも、必ず温度差はある。何度も話し合って泣いたりして、そうしてだんだんまとまっていくのが本当にうれしかった」

「他のクラスに負けないよう上手な人を目立つようにするとみんながまとまらなかったけど、出席番号順にしたらまとまった」

「みんなをまとめるには本当に相手の立場に立たないとだめですね」

チームで目標を達成しようとするからこそ問題にぶつかる。そこから逃げず、自分たちなりの解決法を見つけようと悩むからこそ得るものがある。生徒たちの言葉から学びました。

昨日、就職試験に合格した卒業生が遊びに来ました。面接で何を話したの?と聞いたら、

「つらかったことは何かと聞かれ、コンテストにでるための選抜から漏れて、部活で補欠になった時のことを話しました。補欠だと、練習も隅の方で本当に悲しかったんです。でも、合宿でチームがばらばらになったとき、補欠としてチームが賞をとるために貢献できることは何かって話し合いました。今思うと、あのとき、補欠になって本当によかった。それが自分に生きていると感じます」

「競争」という言葉を教育現場で口にすることがなんとなく悪いことのようにとられがちなので、誤解をおそれず、あえて、競争のもたらすプラス面についてまとめてみました。

もちろん、あまりに結果にこだわることで生じるマイナス面もあるでしょう。でも、社会に出れば競争はかならずあります。その相手は他者かもしれませんが、「記録」や「自分自身」ということもあるでしょう。

子供たちの気持ちにスイッチの入る瞬間の一つにこうした目標ができたとき、チームのために頑張るとき、というものがあることを実感しています。

*これまで特別講座などで何度も御世話になっている藤原和博さんの、よのなか科コラムが「毎日学生新聞 15歳のニュース 」に連載されています。 今回は制服の話題。本校のことがとりあげられています。 新聞社からいただき、図書室に掲示してあります。生徒が発信できるコーナーですので意見を投稿してみては?