創立を記念する日
この写真は昭和25年の卒業アルバムの個人写真です。ブレザーの生徒、セーラー服の生徒がいます。物資が乏しく制服をそろえられなかったのでしょう。
明日は創立を記念する日です。本校は大正の最後の年、1925年に創立されました。 創立者は女性です。当時、女性には参政権もない時代でしたが、創立者、漆雅子は政治家だった父の影響もあり、いつか女性も家の外に出て経済を支え政治に参加して国を動かす日が来ると信じていました。
志をもち、当時の女性としては珍しく大学へ進学した彼女は、恵まれた環境に感謝し、一生懸命勉強して世の中に恩返ししたいと思っていました。しかし、家庭の事情で退学、結婚せざるをえなくなってしまいました。
数日間は泣いて過ごしたそうです。しかし、彼女はいつも「自分はこうありたい」という思いのある、一本筋の通った人でした。そんな境遇になっても、人のせいにしたり、誰かを恨んだりすることなく、今の自分にできる形で人の役にたとうと気持ちを切り替えました。
そこで始めたのが「荏原婦人会」です。近所の女性にたちに声をかけ、自立のため手に職をつける集まりをつくったのです。一人、また一人と仲間が増えってったそのとき、関東大震災が起こりました。各家庭に分断されていた女性だったら何もできなかったかもしれません。
でも、そのときにはすでに大きな組織になっていたので、互いに連絡を取り合い、協力し、当時、地域の政治家だった父が確保してきた米で炊き出しをしたり、けが人の介抱をしたりと地域のためにめざましい働きをしました。
その謝礼として町からもらったミシンや木材に私財をあわせ、創立したのがこの学校の母体です。 それから83年、戦争をはじめとする様々な苦難を乗り越え、卒業生から在校生へとその灯火は消えることなくバトンッッチされてきました。
明日は、学校はお休みです。在校生にはこの機会に、学校の歴史を振り返り、これまでこの学校を守り支えてきた多くの人たちに思いを馳せてほしいです。
今日、在校生に学校後援会から記念のお菓子が配られました。北品川で一番おいしいと評判の老舗に特注してバラのねりきりを作っていただきました。
さっき廊下で中学生が、「バラの形が品女らしくていい」「私は洋菓子が好きだけど、ここは日本だから創立記念のお菓子としては和菓子がいい」と批評していました。なるほど。
ご家庭まで持ち帰ってくれるといいのですが、その前にお腹に消えた場合は、ご家族にはこの写真をご覧いただき、目で味わっていただければと思います。