2011/10/5 水曜日

国語特別講座(早稲田大学・夏目漱石)

カテゴリー: 授業・学習・進学,早稲田大学 — 漆 @ 17:18:11

今日は、3年生は社会人講演会、4年生はトイック講演会「企業と英語」、5年生は早稲田大学連携模擬授業で、ゲストがお越しくださいました。

今日は、2年生では茶道の授業もありましたが、こうして校外のみなさまのお力を借りて、品女生は社会に視野を広げています。それぞれ、後ほど、担当者からご報告をします。

さて、先日行なわれた国語の特別講座の様子を担当の大久保からご紹介します。1年生が授業で学んだ夏目漱石の文学について、早稲田大学の中島先生に授業をしていただきました。

1年生には難しいかな?と思っていたのですが、多くの生徒が参加し、普通教室では間に合わず、CAIで行ないました。最後は先生にサインを求める列ができたそうです。

中島先生は生徒の学んでいる教科書の監修もなさっています。授業で学んだことと、大学での学問が結びつくことで、生徒の学びへのモチベーションはぐっと上がったことでしょう。

早稲田大学文学部より、中島国彦教授にお越しいただきました。
授業で扱った夏目漱石『坊っちゃん』『夢十夜』を中心に、広く小説の読み方までご講義いただきました。
教室には1年生の生徒たち68名が集まり、熱気に満ちていました。

 

「小説には、一言で言い切れる正解はないんです」講義はまず、こんなお話から始まりました。正解を急がず、じっくり考え、作品を味わうことの大切さについて、生徒たちは真剣に耳を傾けていました。

また、文学作品においては、一節を覚えている、ということが大切なのだそうです。
たとえば、森鴎外『舞姫』なら「石炭をば早積み立てつ」、宮沢賢治「永訣の朝」なら「あめゆじゅとてちてけんじゃ」など。
一節でも覚えているということが、作品を読み味わったという価値になる、というお話は、とても興味深いものでした。

さらに、小説の読み方の一つとして、同じ作品を読み方を変えて何度も読むという方法を教えていただきました。
まずは、時間をおいて読む、ということ。高校生になって読んだとき、大人になって読んだとき抱く感想は、中学生の今、抱いた感想とは違うものになるでしょう。

次に、速度を変えて読む、ということ。普段よりゆっくり読んだり、速く読んだりすることで、いつもは読み流していた部分にまで目が届くようになります。

そして最後に、ひとつの単語や物事に注目して、その部分を拾って読む、ということ。
例として、色彩描写に注目して読む(宮沢賢治作品)、女性の服装に注目して読む(夏目漱石『三四郎』)という読書法を教えていただきました。

次に、ご用意いただいた資料を使って、『坊っちゃん』のテキスト表記の変遷についてご講義いただきました。
目にしたことのない漱石直筆の『坊っちゃん』の原稿に、生徒たちも興味津々の様子でした。

 

また、語り手である「坊っちゃん」と作家である漱石の関係について、人称に注目して考えたり、登場人物の「性格」がどのように表現されているかについて説明していただいたりしました。
生徒たちは、一生懸命メモを執っていました。

最後に、小説のタイトルにもなっている「坊っちゃん」という呼称について。
清の言う「坊っちゃん」と、赤シャツ達のいう「坊っちゃん」のニュアンスの違いを示された後、「さて、小説の中に「坊っちゃん」という言葉は何回出てくるでしょうか」という難問が!
この問いかけに、教室中の生徒たちが文庫本をめくって数えていました。

質疑応答の時間には、生徒たちから『夢十夜』や『坊っちゃん』に関する質問が飛びました。
中には、なぜ『坊っちゃん』というタイトルをつけたのか、という質問も。
漱石の原稿を見る限り、どうやら「坊っちゃん」というタイトルは漱石の筆跡ではない模様。
『吾輩は猫である』というタイトルも、高浜虚子の助言から誕生したそうですし、漱石は、タイトルにあまりこだわりがなかったのかもしれません。

講演会の最後には、フラワーアレンジ部の生徒が「中島先生の写真を見て、イメージしながら作りました」という、プリザーブドフラワーの贈呈が。
また、講演会終了後、中島先生のもとには、サインを求める生徒たちで長蛇の列ができていました。
中には、「作中の『坊っちゃん』の数、わかりました! 」という生徒も。

今回の講義で、生徒たちも、小説の読み方の指針が得られたのではないでしょうか。
中島先生、貴重なご講義をありがとうございました。

« 前ページへ次ページへ »