2011/8/31 水曜日

文芸部合宿報告

カテゴリー: クラブ — 漆 @ 16:04:21

夏休みも今日で終わり。明日から2学期です。

生徒の皆さん、宿題は終わったかな?

(そういう私も子どもの頃、31日にたまった宿題を泣きながらやったものです。それで熱を出したことも。この、先延ばしする性格は50歳になっても変わりませんねぇ)

各クラブ、暑さにも負けず、夏休み中も練習に合宿に試合に励んでいました。

その中から、文芸部のご紹介です。

昨年は万城目学さんに学校までお越しいただきインタビューをしたアグレッシブな彼女たち、今年は海堂尊さんがテーマだそうです。

海堂さんは私の尊敬する心臓外科医の須磨久善先生の本も書いていらっしゃるので、私も文化祭の発表が楽しみです。(『外科医 須磨久善』図書室に入れておきますね)

では、顧問の江頭から報告です。

文芸部の今年のテーマは海堂尊さん。

テレビドラマの「チームバチスタの栄光」の原作者と言えばおわかりになるでしょうか?

海堂尊作品には、個性的なキャラクターがたくさん出てきますが、それらのほとんどはモデルがいない中で、「極北クレイマー」や「極北ラプソディ」の登場人物の一人、世良雅志という人物のモデルになった人物がいます。

その人物、村上智彦医師を訪ねて、夕張希望の杜夕張医療センターに取材に行ってきました。

 村上智彦医師は、NHKなどのテレビ番組で何度も取り上げられた方です。財政破綻した夕張市の総合病院を引き継ぎ、公設民営という形で診療所として再生させ、現在も夕張医療センターで医師として治療に当たっていらっしゃいます。

事前に村上氏を取材した二冊の本、「村上スキーム 地域医療再生の方程式」「医師・村上智彦の闘い―夕張希望のまちづくりへ」を読んでの取材です。

 会議室に入って10分ほどして村上先生が姿を現すと、部屋の空気が一気に活性化し、事前に用意していた質問を口にする暇もなく、村上先生はどんどん話を進めて行かれました。

高齢化の進んだ夕張(現在44%)は2050年の日本の縮図になっていること、今の実践がモデルケースとなり将来の高齢化社会における医療のあり方のサンプルとしたいのだという熱い思い、病気のほとんどが生活習慣病となっている現在、健康管理と健康維持のための努力は医者ではなく各自が行うべきものであること。そして、東京のようなストレスフルな社会で生きるよりは、夕張のような自然環境に恵まれ、食べ物もおいしいところで生活するというのも選択肢の一つとしてありだ、ということまで話はつきません。

 「我々がやろうとしているのは、医療ということだけでなく、まちづくりなんだ」という彼の言葉には、一点の曇りもない強い志がこもっていました。

 印象に残る言葉はいくつもありましたが、中でも「リスクを負わなければ、人はついてこない」という言葉は印象的でした。
市の金銭的援助が全くないという悪条件の中で、自ら1億円もの借金を背負って診療所の維持・再建を引き受けた村上氏の言う言葉だけに、この言葉は実に重かったのです。
「これがやりたい、ということがあったら、まず実行すること。やるまえから、リスクがあるから、といって足踏みをしていたら何も始まらない。」
「みんなも、これは覚えておくといいよ」という言葉を添えて自らの生き様を語りかける村上氏の瞳は、子供のようにきらきらとかがやいていました。と同時に、自分の子供に語りかけるようなあたたかな愛情も宿していました。

機関銃のように話を続ける村上医師は、終始立ちっぱなしで、今の今まで患者に応対して仕事をしていたとは思えないほどエネルギッシュ。こちらの自己紹介や取材の目的を告げることができたのは、彼が話し始めてから10分も経過した後だったと思います。
私たちが、海堂尊作品の「極北クレイマー」の背景を取材にきたということをつげると、彼は海堂氏との関係について楽しそうに話してくれました。

話が終わると、今度は病院の中を一通り案内してくださいました。

スタッフの方たちがみんな笑顔で仲良く働いていることが一瞬でわかります。
一人一人のスタッフの働きをきちんと把握し、評価し、成果があったときは大いにほめる。そんな村上氏のあり方が垣間見えた一瞬だった。彼のような人の下で働くと、誰もがやる気になり、笑顔で苦労を楽しめるようになるのだな、ということが本当に実感できました。

「人間がストレスを感じる状況ってどんな時かわかりますか?それはね、責任は重いのに、権限がなく、周囲の協力を得られない時なんですよ。逆に、責任がどんなに重くて大変でも、権限を与えられて、周囲の協力が得られれば、たいていのことは楽しく乗り切れるものなんです。がんばったことをちゃんと評価してもらえることも大切。人間ってそういうものでしょ?」
村上医師の言葉がそのままこの診療所に息づいていました。

取材を終えた日の夜、ミーティングで、生徒たちがすっかり村上教の信者になっていたことを改めて確認。
「あの腕まくりがかっこいい~」
「信念の人って感じだよね」
「言うことに説得力がある」
「世良そのもの!」
表現はそれぞれ異なるものの、彼の魅力にすっかり夢中といった感じ。

諸君、文化祭の発表を楽しみにしてますよ。

夕張医療センターの皆様、村上先生、本当にお忙しい中ありがとうございました。 

 

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