⑤4年生・早稲田大学連携授業(社会科学部)
校内で見つけた花です。華道の授業のおかげで私もそれまでより花に目が行くようになりました。今日、茶道の授業で床の間に飾られていたハナミズキも校内のものです。生徒が通学路が違って見えてきたと言っていましたが、その通りですね。
早稲田大学連携授業の続き。このお話は思わず「あるある~」と言いたくなるような事例ですね。気をつけなくては。
担当の窪田からの報告です。
「消費社会について」社会科学部・鈴木康治先生
「消費社会について」という講座の内容をご報告します。
ポイントは大きく2点です。一つは「消費社会とは何か」、もう一つは「ディドロ効果」についてです。「消費社会とは何か」
消費とは、「ものを買う」という行為であり、人間の普遍的な行動の一つです。
「消費社会」といえる社会とは、3つの条件がそろう必要があります。
一つは、多くの人が「高い水準」の消費を行っているという「物質的側面」(多くの人が同レベルの商品を買える)、二つめは、消費に対する諸個人の関心が高いという「精神的側面」(ショッピングそのものが好き、など)、三つめは諸個人の消費が社会的に大きな意味をもっているという「社会的側面」(環境問題などの悪影響が社会問題となる)ということです。
日本は、まさにその条件がそろっている社会であるといえます。「ディドロ効果」
「ディドロ」とは、18世紀フランスの哲学者であり、『百科全書』の編纂にあたった歴史的に名高い人物です。
消費に関する理論をディドロ自身が考えたのではなく、彼が執筆したエッセイの文章からヒントを得て、マクラッケンという学者がつくった言葉だそうです。エッセイの内容…書斎に座っているディドロの回想です。
彼は、友人から緋色(ひいろ;派手な赤系の色)のガウンを贈られます。
彼は喜び、それまで使っていたぼろぼろの古いガウンを処分します。
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新しいガウンとの調和を考え、書斎の机を新しくします。
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すると壁のタペストリーが痛んでいるように見えて、新しいものと交換します。
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その後も、椅子・本棚・時計などをはじめ、書斎全体の多くの家具を交換します。
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書斎は美しくなったけれども、居心地が悪く感じられ、以前の書斎のほうが居心地がよかったとディドロは後悔します。これは、緋色のガウンに由来する「消費への強制力」の作動により、新たな財が周囲の財との調和を乱しはじめ、調和の回復を求めてさらなる消費が誘発される、ということを意味しています。この消費への強制力のことを「ディドロ効果」といいます。
この作用は、消費スタイルの上昇志向を伴うことがありますが、一度上げてしまった水準を下降させることはかなり難しいのです。
つまり、消費水準への下方への変更には強い「不可逆性」が伴うということです。(所得が減少したときにも難しい!ということ)
「消費」とは人間が日々行っている経済活動ですが、そこにも様々なものの見方があり、今まで知らなかった理論や研究があるのだということを知りました。
まさに、大学で学ぶ学問の入口に触れたようです。そのときには「ふーん、なるほど」と聞いていたことも、思い返すとかなり奥深い理論を学んだと実感します。
高校1年生の生徒にとって、実感するのはもう少し先になるのかもしれませんが、何かのきっかけになってくれることを期待します。